こんにちは。今日は、少し重いテーマに感じるかもしれませんが、とても大切なお話をさせていただきたいと思います。
「相続や贈与なんて、まだ早い気がする…」 「親はまだ元気だし、考えるのも縁起が悪い」
そんなお気持ち、とてもよく分かります。でも実は、相続・贈与の準備は「家族への愛情表現」なんです。早めに準備することで、大切な人たちに安心を届けることができるのです。
投資で少しずつ資産が増えてきたなら、その資産を大切な家族にしっかりと引き継ぐ方法についても、一緒に考えてみませんか?
なぜ今、相続・贈与の知識が大切なの?
知識があるかないかで大きく変わる未来
相続や贈与は、準備の有無で家族の未来が大きく変わります。
準備をしていない場合
- 家族間での争いが生じる可能性
 - 多額の税金を支払うことになる
 - 手続きが複雑で家族が困る
 - あなたの想いが伝わらない
 
準備をしている場合
- 家族が安心して資産を受け継げる
 - 税金を合法的に軽減できる
 - 手続きがスムーズに進む
 - 家族への想いを形にできる
 
この違いは本当に大きいのです。
早めの準備がもたらす安心感
「まだ若いから大丈夫」と思っていても、人生に「もしも」は付きものです。早めに準備することで:
- 家族との会話が増える
 - お互いの価値観を共有できる
 - 段階的に準備を進められる
 - 制度変更にも対応できる
 
準備は「保険」のようなもの。使わないかもしれませんが、あると安心ですね。
第1章:基本用語を分かりやすく理解しよう
相続に関する基本用語
相続 亡くなった人(被相続人)の財産を、家族(相続人)が受け継ぐこと
相続人 財産を受け継ぐ権利がある人(配偶者・子ども・両親・兄弟姉妹)
遺産 亡くなった人が残した財産(プラスの財産もマイナスの負債も含む)
遺言書 亡くなる前に、自分の財産をどう分けるかを書き残した文書
遺留分 法律で保障された、相続人の最低限の取り分
贈与に関する基本用語
贈与 生きているうちに、無償で財産を他人に譲ること
暦年贈与 毎年110万円まで贈与税がかからない制度
相続時精算課税制度 2,500万円まで贈与税を払わず、相続時に相続税で調整する制度
最近の法改正ポイント
令和6年度から贈与税・相続税の制度が一部変更されています。
- 相続時精算課税制度の使い勝手向上
 - 暦年贈与の加算期間延長(3年→7年)
 - 基礎控除の調整
 
詳細は専門家に確認することをお勧めしますが、制度は時々変わることを覚えておきましょう。
第2章:生前贈与を理解しよう
生前贈与とは何か?
生前贈与は、生きているうちに財産を家族に渡すことです。
主なメリット
- 相続税の軽減効果
 - 想いを直接伝えられる
 - 渡した財産の使い方を見守れる
 - 家族関係の円滑化
 
注意すべきデメリット
- 贈与の証拠を残す必要
 - 贈与税が発生する場合がある
 - 一度渡すと取り戻せない
 - 自分の老後資金への影響
 
暦年贈与の活用法
仕組み
- 1年間に110万円まで贈与税非課税
 - 複数人に贈与すれば総額を増やせる
 - 長期間続けることで効果大
 
具体例:3人の子どもに毎年贈与する場合
- 年間贈与額:110万円×3人=330万円
 - 10年間の贈与総額:3,300万円
 - 贈与税:0円
 
相続時精算課税制度の活用
仕組み
- 2,500万円まで贈与税なし
 - 相続時に相続財産に加算して相続税を計算
 - 一度選択すると暦年贈与には戻れない
 
向いているケース
- 将来値上がりしそうな財産の贈与
 - 収益物件の早期移転
 - 相続税がかからない見込みの家庭
 
第3章:遺言書と遺産分割の準備
遺言書の種類と特徴
自筆証書遺言
- 手軽に作成できる
 - 費用がかからない
 - 形式不備で無効になるリスク
 - 法務局保管制度の利用が可能
 
公正証書遺言
- 公証人が作成するため確実
 - 紛失や改ざんのリスクが低い
 - 費用がかかる(5万円~)
 - 証人2人が必要
 
遺言書に書くべき内容
財産の分配
- 誰に何を相続させるか明確に記載
 - 具体的な財産の特定
 - 予備的な相続人の指定
 
想いの伝達
- なぜその分配にしたかの理由
 - 家族への感謝の気持ち
 - 今後の家族関係への願い
 
家族間の話し合いの重要性
事前に話し合うべきこと
- 資産と負債のおおまかな把握
 - 家族それぞれの価値観
 - 介護や扶養に関する考え方
 - 家業や不動産の扱い
 
話し合いのコツ
- 定期的な家族会議の開催
 - 一方的ではなく対話を心がける
 - 専門家を交えた相談も検討
 - エンディングノートの活用
 
第4章:税金と制度を味方にしよう
相続税の基本的な仕組み
基礎控除 3,000万円 + 600万円×法定相続人の数
具体例
- 配偶者と子ども2人の場合:3,000万円 + 600万円×3人 = 4,800万円
 - つまり遺産が4,800万円以下なら相続税はかからない
 
相続税の税率
| 法定相続分に応じる取得金額 | 税率 | 控除額 | 
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | – | 
| 3,000万円以下 | 15% | 50万円 | 
| 5,000万円以下 | 20% | 200万円 | 
| 1億円以下 | 30% | 700万円 | 
| 2億円以下 | 40% | 1,700万円 | 
| 3億円以下 | 45% | 2,700万円 | 
| 6億円以下 | 50% | 4,200万円 | 
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 | 
主な特例制度
配偶者控除 配偶者が相続する財産は、1億6,000万円または配偶者の法定相続分まで相続税がかからない
小規模宅地等の特例 居住用宅地は330㎡まで80%評価減、事業用宅地は400㎡まで80%評価減
生命保険金の非課税枠 500万円×法定相続人の数まで非課税
第5章:便利なツールとサービスを活用しよう
デジタルツールの活用
TSUNAGU(つなぐ)
- スマホで相続・贈与管理
 - 財産一覧や相続人の整理
 - 専門家へのチャット相談
 
メリット:情報の見える化と家族間共有が簡単 注意点:重要な判断は専門家に相談を
スマート相続口座(SMBC信託銀行)
- 事前に分配比率を設定
 - 相続発生時の手続き簡素化
 
メリット:相続手続きがスムーズに 注意点:契約内容をよく理解することが必要
信託銀行のサービス
ファミリーバトン(SMBC信託銀行) 生前贈与の手続きサポート、外貨対応
暦年贈与信託「おくるしあわせ」(三菱UFJ信託銀行) 年間110万円の非課税枠を確実に活用
専門家の選び方
税理士
- 相続税の計算・申告
 - 節税対策の提案
 - 費用:30万円~100万円程度
 
司法書士
- 遺言書作成支援
 - 不動産の名義変更
 - 費用:10万円~50万円程度
 
弁護士
- 家族間のトラブル対応
 - 複雑な相続案件
 - 費用:30万円~(事案による)
 
選び方のポイント
- 相続案件の経験豊富さ
 - 説明が分かりやすい
 - 料金体系が明確
 - レスポンスが早い
 
第6章:よくある失敗例と注意点
贈与でよくある失敗
贈与の証拠不足
- 贈与契約書を作成しない
 - 銀行振込の記録がない
 - 通帳を親が管理し続ける
 
対策:贈与契約書の作成、振込による受け渡し、受贈者による管理
遺言書でよくある失敗
形式の不備
- 日付がない
 - 署名・押印がない
 - パソコンで作成(自筆証書遺言の場合)
 
内容の不備
- 財産の特定が曖昧
 - 遺留分を無視した内容
 - 遺言執行者の指定なし
 
家族間コミュニケーションの失敗
情報共有不足
- 資産の在り処が分からない
 - 本人の意向が不明
 - 家族の期待とのズレ
 
対策:定期的な話し合い、エンディングノートの作成、専門家を交えた相談
学びを深める書籍
初心者におすすめの書籍
『図解 いちばんやさしく丁寧に書いた 相続税申告の本』(須田邦裕著) 図解が豊富で、相続税申告の流れが視覚的に理解できます。
『いちからわかる!相続・贈与 2025年最新版』(五十嵐明彦著) 最新制度を含め、相続と贈与の両方を基礎から学べます。
『図解ポケット 生前贈与がよくわかる本』(植村豪著) 法律用語が苦手な方でも読みやすく、具体的な手続きまで分かります。
『自分と家族の生前の整理と手続き』 Q&A形式で、家族での準備の進め方が具体的に分かります。
実例で見る相続・贈与対策
ケース1:Aさん(55歳・会社員)の場合
家族構成:妻、子ども2人 資産:自宅3,000万円、金融資産2,000万円
対策前
- 相続税:約200万円
 - 家族間での話し合いなし
 
対策後
- 暦年贈与:年220万円(妻・子2人に各110万円)
 - 10年継続で2,200万円移転
 - 相続税:ほぼゼロ
 - 家族との絆も深まった
 
ケース2:Bさん(60歳・自営業)の場合
家族構成:妻、子ども1人 資産:事業用不動産5,000万円、金融資産3,000万円
対策
- 公正証書遺言の作成
 - 事業用不動産の段階的贈与
 - 相続時精算課税制度の活用
 - 小規模宅地等の特例準備
 
結果
- 事業承継がスムーズに
 - 相続税を大幅軽減
 - 家族の将来への不安解消
 
まとめ:あなたの行動プラン
相続・贈与の準備は「愛情の表現」です。完璧を目指さず、できることから少しずつ始めてみましょう。
今月中にやってみること
現状把握
- [ ] 資産と負債のリストアップ
 - [ ] 家族構成と相続人の確認
 - [ ] 相続税がかかるかの概算
 
家族との対話
- [ ] 家族会議の提案
 - [ ] 相続・贈与について話題にする
 - [ ] お互いの価値観を聞く
 
半年以内の目標
知識の習得
- [ ] 関連書籍を1冊読む
 - [ ] セミナーや勉強会への参加
 - [ ] 専門家への相談予約
 
具体的準備
- [ ] エンディングノートの作成開始
 - [ ] 贈与の検討・開始
 - [ ] 必要に応じて専門家選定
 
1年後の理想像
準備の完了
- [ ] 遺言書の作成
 - [ ] 贈与計画の実行開始
 - [ ] 家族との合意形成
 
継続体制の構築
- [ ] 定期的な見直しルール
 - [ ] 専門家との継続的関係
 - [ ] 制度変更への対応体制
 
最後に:想いを形にする勇気を
相続・贈与の準備は、決して暗い話ではありません。これは、あなたが家族を愛する気持ちを、具体的な形にする作業なんです。
「家族に安心してほしい」 「みんなに幸せでいてほしい」 「ありがとうの気持ちを残したい」
そんな温かい想いが、きっと家族の心に届きます。
準備は一度にすべてやる必要はありません。「今日は資産の整理をしてみよう」「今度の休みに家族と話してみよう」そんな小さな一歩から始めてみませんか?
大切な人たちの笑顔を思い浮かべながら、あなたらしいペースで準備を進めてください。その優しさが、未来の家族を支える大きな力になってくれるはずです。
相続・贈与について、ご質問や不安なことがありましたら、ぜひコメント欄でお聞かせください。一緒に学び、一緒に大切な人たちを守る準備を進めていきましょう!