投資を始めて少し経つと、こんなことを考えませんか?「最初は株50%、債券50%で始めたのに、気がついたら株が70%になってる…これって大丈夫?」

実は、これはとてもよくあることなんです。そして、この「比率のズレ」を定期的に調整することを 「ポートフォリオ・リバランス」 と呼びます。今日は、この大切だけどちょっと難しそうなリバランスについて、初心者の方にもわかりやすくお話しします。

なぜ株・債券の比率は勝手に変わってしまうの?

想像してみてください。あなたが株式50万円、債券50万円で投資をスタートしたとします(50:50の比率)。

1年後、株式市場が好調で株価が20%上がり、債券の価格は変わらなかったとしましょう。すると:

  • 株式:50万円 → 60万円
  • 債券:50万円 → 50万円
  • 合計:100万円 → 110万円

一見すると「10万円も増えた!」と喜びたくなりますが、よく見ると比率が 株式55%、債券45% に変わっています。

これが続くと、知らず知らずのうちに リスクの高い資産の比重が増えて、あなたが最初に考えていた投資戦略からズレてしまうのです。

リバランスって、なぜ必要なの?

リスクをコントロールするため

株式の比率が増えすぎると、市場が暴落したときのダメージが大きくなります。逆に、債券の比率が増えすぎると、成長の機会を逃してしまうかもしれません。

定期的にバランスを取り戻すことで、あなたが心地よく眠れるリスクレベルを維持 できるのです。

「高く売って、安く買う」を自然に実現

リバランスでは、値上がりした資産を一部売って、相対的に下がった資産を買い増します。これって実は、投資の基本である「高く売って、安く買う」を自然に行っていることなんです。

感情に左右されがちな投資判断を、機械的なルールで補ってくれる 素晴らしい仕組みなんですね。

あなたに合った株・債券比率の見つけ方

比率に「絶対的な正解」はありませんが、目安となる考え方があります。

年齢を基準にした考え方

よく言われるのは「100 – 年齢 = 株式の比率」という方法です。

  • 30歳なら:株式70%、債券30%
  • 50歳なら:株式50%、債券50%
  • 65歳なら:株式35%、債券65%

若いうちはリスクを取って成長を目指し、年齢を重ねるにつれて安定性を重視していく考え方ですね。

ライフステージ別の目安

積極的な成長期(20〜40代)

  • 株式60〜80%、債券20〜40%
  • まだ時間があるので、多少のリスクを取って資産成長を目指す

安定成長期(40〜50代)

  • 株式40〜60%、債券40〜60%
  • リスクとリターンのバランスを取りながら着実に増やす

資産保全期(60代以降)

  • 株式20〜40%、債券60〜80%
  • 安定性を重視し、インフレに負けない程度の成長を目指す

大切なのは、夜ぐっすり眠れる比率を見つけること です。数字に振り回されず、あなた自身が納得できるバランスを見つけてくださいね。

実践!リバランスの手順(ステップバイステップ)

ステップ1:現状把握

まずは、今のポートフォリオがどうなっているかを確認しましょう。

  • 株式の評価額はいくら?
  • 債券の評価額はいくら?
  • 全体に占める比率は?

ステップ2:目標比率との比較

例えば、目標が「株式50%、債券50%」なのに、現実が「株式60%、債券40%」だったとします。株式が10ポイント多く、債券が10ポイント少ない状態ですね。

ステップ3:調整方法を決める

方法1:売買で調整 株式を少し売って、その資金で債券を買う

方法2:新しい資金で調整 追加投資の予定があるなら、債券を多めに買って比率を調整

方法3:分配金や配当で調整 受け取った分配金や配当を、比率の少ない方に再投資

ステップ4:コストを考慮

売買には手数料がかかります。また、利益が出ている資産を売ると税金もかかることがあります。無理に完璧な比率にしようとせず、コストと効果のバランスを考えてくださいね。

あなたをサポートしてくれるツールたち

自動でお任せ派

ロボアドバイザー(ウェルスナビ、THEO、楽ラップなど) あなたに代わって自動でリバランスしてくれます。手間はかかりませんが、手数料は必要です。「考える時間がない」「専門的なことは任せたい」という方におすすめ。

自分でやりたい派

証券会社のポートフォリオ分析ツール 多くのネット証券で、保有資産の比率を円グラフで表示してくれる機能があります。SBI証券、楽天証券、マネックス証券などで利用できます。

家計簿・資産管理アプリ MoneyForwardやZaimなどで、投資資産も含めた全体的な資産バランスを確認できます。

心の支えになる、おすすめの本

リバランスの理論を学びたいなら

『敗者のゲーム』(チャールズ・エリス著) 投資は「負けないこと」が大切だということを、データとともに教えてくれます。リバランスの重要性もよくわかります。

『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール著) 資産配分の考え方や、なぜ分散投資が大切なのかを論理的に説明してくれる名著です。

実践的なアドバイスが欲しいなら

『投資の大原則』(バートン・マルキール、チャールズ・エリス共著) 理論と実践のバランスが取れた、初心者にもやさしい内容です。

初心者が気をつけたいポイント

完璧を目指さない

「50:50にしたいのに、51:49になってる!」なんて、細かすぎる調整は不要です。5〜10ポイントのズレなら様子見で十分 です。

コストを忘れずに

売買手数料や税金を考慮しないリバランスは、かえって損になることがあります。特に少額投資の場合は、手数料負けしないよう注意してくださいね。

感情に振り回されない

「株が上がってるからもっと買いたい」「債券が下がってるから売りたい」…これらは人間の自然な感情ですが、リバランスの時は 機械的に淡々と 行うのがコツです。

あなたの年次リバランス・チェックリスト

毎年12月(または1月)にやること

☐ 現在のポートフォリオの評価額を確認 ☐ 各資産の比率を計算 ☐ 目標比率との差をチェック ☐ リバランスが必要かどうか判断(5〜10ポイント以上のズレがあるか) ☐ リバランス方法を決定(売買 or 追加投資 or 様子見) ☐ 必要なら実行 ☐ 結果を記録(来年の参考のため)

リバランス記録ノートの例

2024年リバランス記録
実施日:2024年12月15日
調整前:株式65% 債券35%(目標:株式50% 債券50%)
調整内容:株式インデックスファンドを15万円分売却、債券ファンドを購入
調整後:株式51% 債券49%
コスト:売買手数料500円、税金3,000円
来年の目標:現状維持(株式50% 債券50%)

まとめ:リバランスは投資の「健康診断」

ポートフォリオのリバランスは、まさに投資の 「年次健康診断」 のようなものです。

毎年一度、あなたの投資が健康な状態を保っているかチェックし、必要に応じて調整する。それだけで、長期的に安定した投資成果を期待できるようになります。

最初は「面倒だな」と思うかもしれませんが、慣れてくると「今年はどんな1年だったんだろう」と振り返る良い機会にもなります。投資について考え、学ぶ習慣も身につきますよ。

大切なのは、完璧を目指さないこと。あなたのペースで、あなたらしい投資を続けていけば、きっと素晴らしい結果が待っています。

来年の今頃、「リバランスをやっておいてよかった」と思える日が来ることを願っています。一緒に、着実な投資家への道を歩んでいきましょうね。


投資は自己責任で行ってください。この記事は教育目的であり、特定の投資を推奨するものではありません。リバランスを行う際は、税制や手数料についても十分ご確認ください。