保険は「必要最小限」でいい。掛け捨て中心への見直し方

保険料が家計を圧迫しているのに、解約できない理由

毎月の保険料の合計を、最後に確認したのはいつですか。

生命保険、医療保険、がん保険、個人年金保険、学資保険。気づくと毎月3〜5万円の保険料を払っている家庭は珍しくありません。

しかし「解約すると損をする気がする」「何かあったときに後悔したくない」という心理が、見直しをためらわせます。この感覚は理解できますが、そこに保険の営業トークが乗っかる構造があることも知っておく必要があります。

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2022年)」によると、世帯主の年間払込保険料の平均は約37.1万円、月換算で約3万円です。この数字は「平均」であり、決して少額ではありません。

多くの場合、保険は「加入することがゴール」になってしまっています。必要な保障を、必要な期間だけ、できるだけ低コストで持つ。この原則に戻ることが、見直しの出発点です。


結論から書きます。

保険の基本は「自分では対応しきれない大きなリスクだけをカバーする」ことです。具体的には、死亡保障と就労不能リスクに絞り、医療費の大半は高額療養費制度でカバーできることを踏まえた上で、掛け捨て型の定期保険・収入保障保険を軸に組み立てます。貯蓄性保険は原則不要と考えて構いません。


保険が必要な「本当のリスク」は3つしかない

保険の目的は、発生確率は低いけれど、起きたときに家計が壊滅するリスクをカバーすることです。

この定義に従うと、保険が必要なリスクは大きく3つに絞られます。

① 一家の生計を担う人が死亡するリスク
子どもがいる家庭で、養育費・生活費を稼ぐ人が亡くなった場合、残された家族は長期間にわたって収入を失います。このリスクは、自力での対応が困難です。

② 病気・ケガで長期間働けなくなるリスク
入院や手術そのものの費用より、働けない期間の収入減少の方が家計への打撃は大きい場合があります。公的制度として「傷病手当金」(健康保険加入者は最長1年6か月、標準報酬日額の3分の2相当)が使えますが、フリーランスや自営業者はこの制度の対象外です。

③ 自動車事故等で高額な賠償責任を負うリスク
数千万円〜億単位の賠償になる可能性があり、自賠責保険だけでは到底カバーできません。任意の自動車保険の対人・対物賠償は「無制限」が基本です。

逆に言えば、これら以外のリスクの多くは、貯蓄と公的制度の組み合わせで対応できます。

「入院したら困る」という直感は分かりますが、日本には公的医療保険があります。窓口負担は原則3割で、高額療養費制度を使えば1か月の自己負担上限はおおむね8〜10万円前後(年収約370〜770万円の方の場合、上限は80,100円+計算式による)に抑えられます(出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」)。

入院日数の平均は減少傾向にあり、2022年の患者調査(厚生労働省)によると一般病床の平均在院日数は約16日です。長期入院に備えた高額な入院特約を追加するよりも、50〜100万円の生活防衛資金を手元に持っておく方が、現実的な備えとして機能するケースが多いです。


貯蓄性保険が「損になりやすい」理由

保険の見直しで最も効果が大きいのは、貯蓄性保険の整理です。

貯蓄性保険とは、終身保険・養老保険・個人年金保険・学資保険などを指します。「保険料を払い続けると将来お金が戻ってくる」という仕組みです。

しかし、この仕組みには構造的なコストが乗っています。

保険会社は、集めた保険料から死差益・費差益・利差益という3つの利益を確保して運営しています。加入者が受け取る「返戻金」は、払い込んだ総額より少ないことが多く、特に早期解約では大幅な元本割れが起きます。

具体的なイメージとして、払込額に対する返戻率を比較してみます。

保険の種類 解約時期 おおむねの返戻率の目安
終身保険(低解約返戻金型) 払込満了前 60〜70%程度
終身保険(低解約返戻金型) 払込満了後 100〜105%程度
個人年金保険 途中解約 80〜95%程度
学資保険 満期受取 100〜108%程度

※返戻率は契約時期・契約内容・予定利率によって大きく異なります。上記はあくまで目安です。

問題は、この「105%」「108%」という数字を、同じ期間・同じ金額をインデックスファンドの積立に振り向けた場合と比較することです。

たとえば月2万円を20年間、年率3%で運用できたとすると、元本480万円に対して約656万円(概算)になります(複利計算、税控除前)。学資保険の返戻率108%は元本480万円に対して約518万円。同じ20年でも、運用効率には大きな差があります。

もちろん投資にはリスクがあります。ただ「保険は安全で確実」という認識も半分しか正しくありません。インフレが続く環境では、実質的な購買力は目減りします。

私が家計を見直す場合、まず「今ある保険が、保険でなければならない理由があるか」を問い直すことから始めます。貯蓄機能が目的なら、NISAやiDeCoの方がコスト・流動性ともに優れている場合がほとんどです。


見直しのタイミングと、掛け捨て型への組み替え方

保険の見直しが必要なタイミングは、ライフイベントと連動しています。

結婚・出産時
扶養家族が増えた時点で、死亡保障を本格的に考える必要が生まれます。逆に、独身で扶養なしであれば、高額な死亡保障は不要です。

子どもが独立した時
子どもへの養育費負担がなくなれば、必要な死亡保障額は大幅に減ります。それにもかかわらず、以前のままの高額な終身保険を継続しているケースは多いです。

住宅ローンを組んだ時
団体信用生命保険(団信)に加入していれば、ローン残高は死亡時に相殺されます。既存の生命保険との重複は見直すポイントです。

具体的な組み替えの手順は以下の通りです。

Step 1:必要な死亡保障額を計算する
遺族に必要な生活費の総額から、遺族年金・貯蓄・配偶者の収入を差し引いた「不足分」が、死亡保険でカバーすべき金額です。子どもが小さい時期は数千万円になることもありますが、子どもが独立すれば数百万円程度まで下がるのが一般的です。

Step 2:定期保険または収入保障保険で保障を準備する
必要保障額が分かったら、同額の定期保険(一括払いタイプ)か収入保障保険(毎月一定額を受け取るタイプ)の掛け捨て型で手当てします。

収入保障保険は、加入直後は保障額が大きく、時間とともに総受取額が減っていく構造なので、子どもの成長に合わせて保障が自然に減っていく点がコスト効率に優れています。

Step 3:貯蓄性保険を解約するかどうかを判断する
解約返戻金が払込額を下回っていれば「損切り」の判断になります。しかし、今後も払い続けて受け取る返戻金と、解約して別の方法で運用した場合の比較をすることで、「今解約した方が長期的に有利か」を判断できます。

どうしても迷う場合は、「払済保険」への変更という方法もあります。以降の保険料の支払いを止めつつ、保障を維持する形に切り替える方法で、解約とは異なります。保険会社に確認してみてください。

Step 4:医療保険・がん保険は「薄く」持つ
公的医療保険と高額療養費制度を前提にすれば、医療保険の保障は最低限で十分です。入院日額3,000〜5,000円程度の掛け捨て型でも、入院時の日用品や差額ベッド代には対応できます。


※本記事は2026-05-22時点の制度に基づきます。最新情報は国税庁・金融庁等の公式サイトでご確認ください。
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まとめ:保険を整理する3つの原則

  • 保険でカバーすべきは「大きくて自力対応が困難なリスク」のみ。死亡保障・就労不能・賠償責任の3つに絞って考えると整理しやすくなります。
  • 貯蓄機能を保険に求めない。貯蓄や資産形成はNISA・iDeCoで行い、保険はあくまで保障に特化した掛け捨て型を軸にします。
  • 見直しのタイミングはライフイベントに合わせて。結婚・出産・子どもの独立・住宅ローン締結など、家族構成や収入が変わった節目が見直しのベストタイミングです。

保険は「加入したら終わり」ではなく、定期的に点検するものです。まずは現在払っている保険料の合計と、それぞれの保障内容を一覧にするところから始めてみてください。


Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash