「そろそろ教育費のことを考えないといけないよね」と夫婦で話し合ったのに、調べれば調べるほど数字が大きくてため息をついた、という経験はありませんか。私も長女が小学校に上がるタイミングで初めて真剣に向き合ったのですが、「2000万円かかる」「3000万円必要」といった情報ばかりが目に飛び込んできて、正直パニックになりました。
でも落ち着いて整理してみると、全部が全部かかるわけではないんです。かかる金額は、子どもをどんな学校に進ませるか・習い事をどれくらいさせるかによって、まったく違います。ポイントは「平均値に惑わされず、わが家の進路プランで試算すること」。そのやり方を、私の体験も交えながらお伝えします。
教育費の全体像をざっくりつかむ
「入学から大学卒業まで」で区切って考える
教育費は、幼稚園・保育園から始まって大学を卒業するまでの約18〜22年間にわたってかかり続けます。一度に全額を用意しなければいけないわけではありませんが、だからこそ「漠然とした不安」が生まれやすいんですよね。まずは大きなブロックに分けてみましょう。
- 幼稚園・保育園(3〜6歳ごろ)
- 小学校(6〜12歳)
- 中学校(12〜15歳)
- 高校(15〜18歳)
- 大学・専門学校(18〜22歳ごろ)
それぞれの段階で「公立か私立か」「自宅通学か一人暮らしか」という選択が入ってきます。この選択によって、総額が驚くほど変わります。
公立・私立でここまで違う、段階別の目安金額
文部科学省が定期的に実施している「子供の学習費調査」などをもとに整理すると、学校教育費の目安はおおよそ以下のようなイメージです(授業料・学校納付金などの学校教育費に限った年間額)。
幼稚園:公立で年間約23万円、私立で約53万円。ただし現在は幼児教育・保育の無償化により、3〜5歳は月2万5700円までが無償化されているため、実質負担はぐっと下がります。
小学校:公立で年間約35万円(給食費・教材費などを含む)、私立で約170万円前後。この差は6年間累計にすると約200万円 vs 約1020万円と、6倍近くになります。
中学校:公立で年間約53万円、私立で約143万円ほど。
高校:公立で年間約51万円、私立で約105万円。高等学校就学支援金制度があるため、所得によっては私立でも実質負担が減ります。
大学:国公立で初年度約82万円、その後年間約54万円(授業料)。私立文系で初年度約130万円・年間約93万円、私立理系で初年度約155万円・年間約125万円が目安です。
これらをざっくり全部公立で通わせた場合、学校教育費だけで合計約700〜800万円ほど。全部私立(大学は私立文系)だと合計約2200〜2500万円規模になります。「全部私立で2000万円以上」という数字の背景は、ここにあります。
学校の費用以外に忘れがちな出費
試算で見落としやすいのが、学校の授業料以外にかかるお金です。私が実際に「こんなにかかるの!?」と驚いたのがこの部分でした。
習い事・塾の費用は、小学校高学年から中学・高校にかけて一気に増えます。地方の公立中学でも、中3から塾に通わせると年間30〜50万円かかることは珍しくありません。難関校を目指す中学受験をするなら、小4〜小6の3年間で塾代だけで200〜300万円を超えるケースもあります。
大学進学時の一人暮らし費用も大きなポイントです。地方から都市部の大学に進学するとなると、引越し費用・家具家電の初期費用に加えて、仕送りが月6〜8万円ほどかかります。4年間の仕送り総額は300〜400万円になることも。学費と合わせると、一人暮らしの私立大生には4年間で700〜900万円かかる計算です。
わが家の「進路パターン」で試算する方法
3つのパターンを書き出してみる
「教育費の平均」を調べても、自分の家庭に当てはまるとは限りません。大切なのは、今の段階でどんな進路を想定しているかをパターン化して、それぞれで試算してみることです。
私がおすすめしているのは、「現実的なパターン」「少し背伸びするパターン」「子どもが希望した場合のパターン」の3つを書き出す方法です。
たとえば、現在5歳の子どもがいる家庭の場合こんなイメージです。
パターンA(公立中心):幼稚園(無償化)→ 公立小学校 → 公立中学校 → 公立高校 → 国公立大学(自宅通学)
目安総額:約700〜900万円
パターンB(一部私立):幼稚園(無償化)→ 公立小学校 → 公立中学校 → 私立高校 → 私立文系大学(一人暮らし)
目安総額:約1500〜1800万円
パターンC(私立中心):幼稚園(私立)→ 公立小学校 → 中学受験して私立中高一貫 → 私立文系大学(一人暮らし)
目安総額:約2000〜2500万円
この3パターンを並べるだけで、「どこに備えればいいか」が格段に見えやすくなります。わが家では最初にパターンBを現実ラインとして試算し、パターンCも視野に入れて準備する方針にしました。
年齢別のキャッシュフロー表を作る
総額だけを見ると大きな数字に圧倒されてしまいますが、実際には「毎年・毎月いくら必要か」を時系列で並べることで、家計の実態に合わせた準備ができます。簡単な表で構いません。子どもの年齢(または学年)を縦軸に、かかる費用の項目を横軸に書いて、予想額を埋めていくだけです。
ポイントは「出費が重なるタイミング」を事前に把握しておくこと。たとえば、中学受験の塾費用がかかる時期と、下の子の幼稚園入園が重なる、などはよくある家庭の悩みです。そういった「山」が見えると、逆算して「ここまでにこれだけ貯めておけばいい」という具体的な目標が立てやすくなります。
試算に使える便利な数字の目安
手計算でも試算しやすいよう、私がよく使っている概算の数字をお伝えします。あくまで目安ですが、ざっくりした計画を立てるには十分です。
- 公立小学校6年間:学校費用+習い事込みで約200〜300万円
- 公立中学校3年間:学校費用+塾込みで約150〜250万円
- 中学受験する場合の塾費用(小4〜6):200〜300万円(別途)
- 公立高校3年間:学校費用+塾込みで約150〜200万円
- 私立高校3年間:学校費用+塾込みで約250〜350万円
- 国公立大学4年間(自宅):約250万円
- 私立文系大学4年間(自宅):約400〜450万円
- 私立文系大学4年間(一人暮らし):約700〜900万円
これらを選んだパターンで足し合わせれば、だいたいの総額が見えてきます。
教育費の「貯め時」と「貯め方」
小学校低学年までが最大のチャンス
子育て中の家計を長く見てきて感じるのは、「教育費を貯めやすい時期は意外と限られている」ということです。子どもが幼稚園・小学校低学年のうちは、習い事の費用が比較的少なく、塾代もまだかかりません。この時期に積み立てを始めることが、後々の余裕につながります。
私自身は長女が2歳のときに学資保険に加入し、毎月の積み立てを始めました。当時は「月1万円くらいしか回せない」と思っていましたが、10年続けると元本だけで120万円。運用益と合わせると、高校入学時にまとまったお金として受け取ることができました。焦って一気に貯めようとするより、「小さくても続ける」のが結局いちばん確実だと実感しています。
教育費の「三本柱」で考える
教育費の備え方には、大きく3つのアプローチがあります。この3つをバランスよく組み合わせるのが、家計への負担を分散しながら準備する基本的な考え方です。
①貯蓄(現金・定期預金):何かあったときすぐ使えるお金。教育費専用口座を作って毎月定額を振り込む方法が、いちばんシンプルで確実です。
②学資保険・終身保険:強制的に積み立てられる仕組みがメリット。入学・進学のタイミングに合わせて受け取れる設計が多く、貯蓄が苦手な方に向いています。万が一のときの保障もセットです。
③NISA(特定口座の投資信託など):長期で積み立てることで、現金貯蓄より増える可能性があります。ただしリスクもゼロではないので、「大学進学まで10年以上ある」など時間的余裕がある場合の選択肢として検討するのがおすすめです。
わが家では①と②を中心にしながら、余裕があるときに③を少し加えるスタイルにしています。「全部投資にして増やしたい」という気持ちもわかりますが、絶対に必要なお金はリスクにさらさないことが大前提です。
知っておきたい国の支援制度
無償化・支援金制度を正しく把握する
教育費の自己負担を減らすためには、国や自治体の支援制度をきちんと把握しておくことが大切です。知らないまま使わずにいると、本来もらえるはずのお金を取り逃してしまいます。
代表的なものをおさえておきましょう。
幼児教育・保育の無償化:3〜5歳の子どもは、認可保育所・幼稚園・認定こども園などの利用料が月2万5700円まで無償化されます。0〜2歳は住民税非課税世帯が対象です。
高等学校就学支援金制度:高校の授業料を国が支援する制度で、世帯年収の目安として約590万円未満の家庭は私立高校でも年間最大39万6000円の支援が受けられます。所得によって額が変わるので、入学前に確認することをおすすめします。
大学の授業料減免・給付型奨学金(高等教育の修学支援新制度):住民税非課税世帯・それに準ずる世帯の学生が対象で、大学の授業料・入学金の減免と、返済不要の給付型奨学金が受けられます。所得要件があるため、事前に条件を確認してください。
日本学生支援機構の奨学金:給付型と貸与型(第一種・第二種)があります。貸与型は将来返済が必要になるので、借りすぎないよう計画的に検討することが重要です。
児童手当を教育費に回す発想
見落としがちですが、児童手当を全額貯蓄に回すだけで、かなりのまとまった金額になります。0歳から中学校卒業まで受け取れる総額は、第一子で約200万円ほどになります(所得制限などにより異なります)。日常の出費に使わず、専用口座に移して積み立てていくだけで、大学入学時の初期費用の大部分をカバーできます。
私は長女が生まれたときから児童手当は手をつけずに貯め続け、高校入学時に「進学準備口座」として使い始めました。「毎月の積み立てとは別の口座に自動振込」にすることで、使ってしまうリスクも防げます。地味な方法ですが、これがいちばん確実だったと思っています。
「完璧な準備」より「動き続けること」が大事
試算は1回で終わらせない
教育費の試算は、1回やって終わりではありません。子どもが成長するにつれて、進路の希望が変わったり、家計の状況が変わったりします。私は毎年4月、学年が変わるタイミングで「今年の教育費実績」と「来年以降の見通し」を見直すようにしています。
特に、子どもが小学校4〜5年生になる頃は要チェックです。中学受験をするかどうか・公立中学に進むかどうかによって、その後の費用がガラッと変わります。この時期に一度しっかり見直しておくと、慌てなくて済みます。
パートナーと数字を共有する
教育費の悩みは、ひとりで抱え込むと「不安の空回り」になりがちです。夫婦で育児方針が合わないという悩みの多くは、実は「お金の話をちゃんとしていない」ことが原因だったりします。
「うちは教育費にいくらかかりそうか」「どのくらい貯まっているか」「子どもにどんな進路を歩んでほしいか」を、具体的な数字を見ながら話し合う機会を作ってみてください。感覚の話だとすれ違いやすいですが、数字があると意外とスムーズに話が進みます。わが家では年に1〜2回、家計の見直しを「教育費会議」と称してやっています。大げさな話し合いでなく、お茶を飲みながら30分だけ、くらいのイメージです。
「貯め終わること」よりも「スタートすること」
教育費の準備で最初の壁は、「どうせ全額は貯められない」という気持ちです。でも、全額貯められなくていいんです。一部は奨学金を利用する、一部は子どもがアルバイトで補う、という選択肢も現実的にあります。大切なのは、今の家計で無理なく続けられる金額から始めて、止めないことです。
月5000円でも1万円でも、始めてみると「思ったより貯まってきた」と感じる瞬間が必ず来ます。私自身がそうでした。完璧な計画を立ててからスタートしようとすると、気づいたら数年が過ぎていた、なんてことになりかねません。まずは「子どもの教育費専用口座を作る」「児童手当を移す」の2つだけ、今日やってみてください。それだけで、十分なスタートです。
Photo by Vitaly Gariev on Unsplash