「ごはんだよ〜!」と呼んでも、子どもがリビングからなかなか来ない。ようやく座ったと思ったら、スマホを見ながらの夫。気づけば自分だけが黙々とおかずを並べている……なんて経験、ありませんか?
私も長い間、「食事の時間」がちょっとした戦場でした。上の子は野菜を端に寄せる、下の子はすぐに「もうおなかいっぱい」と言い出す、夫は仕事の話ばかり。「楽しい食卓」なんて雑誌の中だけの話だと思っていたんです。
でも試行錯誤を重ねるうちに、少しずつ変わってきました。食卓が「ただごはんを食べる場所」から「家族がほっとできる場所」に変わっていったんです。今日は、私が実際にやってみてよかった工夫を、理由もセットでお伝えしたいと思います。
なぜ「家族で食事を楽しむ」ことが大切なのか
食卓は子どもが「安心」を学ぶ場所
食事の時間というのは、単に栄養を摂る時間ではありません。子どもにとって、家族がそろって同じものを食べるという体験は「自分はここに居ていい」という安心感につながっています。
食事中に親が笑顔で話しかけてくれる、「おいしいね」と共感してくれる、そういった小さな積み重ねが子どもの情緒の安定に関わっていると、小児科の先生から教わったことがあります。実際、うちの子どもたちを見ていても、食卓での会話が弾んだ日は、その後の子どもたちの様子がどこか穏やかな気がします。
「嫌いな食べ物」が減るのも食卓の雰囲気から
子どもの偏食に悩むパパ・ママは多いと思います。私も上の子がピーマン・きのこ・魚…と嫌いなものだらけで途方に暮れた時期がありました。
ここで大事なのは、「食べさせよう」と力むより「楽しい雰囲気の中で食べているうちに慣れていく」という発想の転換です。食事中の雰囲気が緊張していたり、食べるたびに「これも食べなさい」とプレッシャーをかけられたりすると、その食べ物への拒否感がどんどん強くなってしまうんですね。
逆に、楽しい会話の中で「ちょっとだけ食べてみる?」という雰囲気だと、子どもも試しやすい。うちの子も、食卓の雰囲気が変わってから、少しずつ「一口だけ食べてみる」が増えていきました。
家族の「対話の習慣」が育つ
忙しい日々の中で、家族全員がそろって話せる時間というのは、実はとても貴重です。食事の時間を「対話の場」として意識するようになると、子どもが学校であったことや友達のこと、悩んでいることをぽろっと話してくれる機会が増えました。
子どもが思春期に入ってからも、「食卓で話す習慣」があると親子のコミュニケーションが途切れにくいという話を聞いたことがあります。今のうちに「食卓は安心して話せる場所」と感じさせておくことが、長い目で見ると大切だと私は思っています。
食卓の雰囲気をよくするための環境づくり
テレビを消す、スマホをしまう。たった1ルールで変わる
「テレビを消す」なんて当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、これがなかなか難しい。特に夕食時のニュースや夫が見たがるスポーツ中継など、「ちょっとくらいいいじゃないか」というムードになりがちです。
我が家で試みたのは、「食事の間だけはみんなでしまおう」というルールを子どもと一緒に決めることでした。大人が一方的に決めると反発が出やすいですが、「じゃあ食べ終わったら見ていいよ」と子ども自身が納得した形でルールを設けると、意外とすんなり受け入れてくれました。
テレビやスマホがなくなると、最初は静かすぎて気まずいくらいなんですが(笑)、だんだん「そういえばさ〜」と話題が出てくるようになります。沈黙を埋めようとして会話が生まれる、という感じです。
食卓を「見た目」から整える
食事の楽しさは、味だけじゃなく「雰囲気」からも生まれます。私が意識するようになったのは、テーブルの上をすっきりさせること。郵便物や学校のプリントが山積みになった食卓では、心もなんとなく落ち着かないんですよね。
それから、花や観葉植物を小さくテーブルに置くようにしました。100円ショップで買ってきた小さな花瓶に庭から摘んできた花を一輪。それだけで食卓の雰囲気がずいぶん変わります。「今日はなんかきれいだね」と子どもが言ってくれた日は、ちょっとうれしかったです。
お皿も、毎日同じものばかりでなく、たまに色のついたお皿やかわいい形のお皿を使うと子どものテンションが上がります。特に小さい子は「このお皿使っていい?」と自分で選ぶのを楽しんでくれます。
「座る位置」を変えてみる
これは意外と盲点なんですが、毎日同じ席配置だと、食卓での会話の構図も固定されがちです。うちは試しに「今日はくじ引きで席を決める」というのをやってみたら、子どもたちが大喜びで、いつもと違う会話が生まれました。
兄弟姉妹がいるご家庭では、隣に座る人が変わるだけで「なんかいつもと違う!」という新鮮さが生まれます。特別な日だけでなく、週に一度くらいやってみると食卓が少し特別な場所になります。
子どもが食事に前向きになる「参加のしかけ」
「お手伝い」ではなく「一緒につくる」という感覚を大切に
子どもが料理に参加すると、自分が関わった料理は食べてくれやすくなります。これはよく言われることですが、ポイントは「お手伝いをさせる」という親目線ではなく、「一緒につくる」という対等な感覚で誘うことだと思っています。
「ちょっと混ぜてくれる?」「これ並べてくれたら助かる」という言い方だと、子どもは「頼りにされている」と感じて張り切ってくれます。たとえ時間がかかっても、こぼしても、その過程を楽しむのが食育の本質だと私は思っています。
小さい子(2〜3歳)なら野菜を洗う、レタスをちぎる。小学生になったら玉ねぎの皮をむく、ドレッシングを混ぜる。年齢に合わせた「できること」を任せていくと、子どもの自信にもつながります。
「今日のごはんのテーマ」で食卓に物語をつくる
我が家でたまにやるのが、「今日のごはんのテーマ」を決めること。たとえば「今日は黄色いものを集めよう」とか「今日は○○県の料理を作ってみよう」とか。難しい話ではなく、ちょっとした遊び感覚でいいんです。
子どもが好きな絵本やアニメにちなんだメニューにするのも盛り上がります。うちの子が「魔女の宅急便」にはまっていた頃、黒いものを集めた「魔女ごはん」(ひじきの煮物、黒豆、のりおにぎり)を作ったら大喜びでした。「食べる」という行為に物語が加わると、子どもの食への興味が全然違います。
「食べた量」より「食べた体験」を褒める
「全部食べられたね!えらい!」という褒め方が悪いわけではないのですが、これが続くと「全部食べないといけない」というプレッシャーになってしまうことがあります。
私が意識するようにしたのは、「食べた量」より「食べた体験」を共有すること。「これ、おいしかった?」「どんな味がした?」「ちょっと苦かったけど食べてみたんだね、すごいね」というような言葉がけです。
食べることへの評価ではなく、食べることへの興味や挑戦を認める声がけをすると、子どもが食事に対してポジティブな記憶を積み重ねていきます。これが長い目で見た偏食解消にも関係してくるんです。
会話を生み出す「食卓トーク」のコツ
「今日どうだった?」より具体的に聞く
「学校どうだった?」「うん、別に」で終わる会話、経験ありませんか?これ、質問が漠然としすぎているのが原因のことが多いです。
具体的に聞くほど、子どもは答えやすくなります。「今日の給食、何が出た?」「体育で何やったの?」「休み時間は誰と遊んだの?」など、答えが具体的にイメージできる質問のほうが会話が続きます。
それから、大人側も話す、というのが大事です。子どもに質問ばかりするのではなく、「今日ね、スーパーでおもしろいことがあってさ〜」と親も日常を話すことで、「食卓は話す場所」という雰囲気が自然に生まれます。
「食べ物クイズ」で食への興味を広げる
食卓での会話のネタとして、食べ物にまつわる豆知識やクイズは盛り上がります。「トマトって野菜?果物?」「なんでほうれん草は緑色なの?」「これ何から作られていると思う?」など。
子どもが知っている範囲で「わかった!」と言える問題を混ぜながら、ちょっと難しい問題も入れると夢中になって考えてくれます。「正解したらデザートが増える」なんてルールを作ると、さらに盛り上がります(笑)。
私が意識しているのは、答えを教えることよりも「おもしろいね」「不思議だね」という感覚を共有すること。食べることへの興味は、知的な好奇心とつながっているんです。
「今日のMVP料理」を決める
これは我が家で続いている恒例行事なのですが、食事の終わりに「今日一番おいしかったのどれ?」を家族それぞれが発表するというもの。パパが「俺は味噌汁かな」、子どもが「唐揚げ!」、私が「実はサラダ」なんて、それぞれ違うのがまた楽しいです。
料理を作った側としては、素直な感想が聞けてうれしいですし、子どもは「意見を聞いてもらった」という満足感があるようです。「じゃあ来週もまた作ろうか」という次への楽しみにもつながります。
忙しい日でも「楽しい食卓」を諦めないために
「全部手作り」じゃなくていい、という自分への許可
食育というと「手作りじゃないといけない」というプレッシャーを感じているパパ・ママは多いと思います。私もずっとそうでした。でも、お惣菜を買ってきた日でも、みんなでお皿に盛り付けて、会話しながら食べたら、それは十分に豊かな食卓だと今は思っています。
大事なのは「何を食べるか」より「誰とどんなふうに食べるか」。スーパーのコロッケでも、家族でわいわい食べる日は子どもの記憶に残ります。逆に、どんなに手の込んだ料理でも、食卓が沈黙だったり険悪な雰囲気だったりすると、記憶に残りません。
「15分の食卓」でも積み重ねる
仕事で疲れて帰宅した日、子どもの習い事と重なった日、体調が優れない日……毎日にこやかに食卓を囲むなんて、現実には難しいときもあります。
そんなときは「15分でいい」と思うようにしています。完璧な食卓じゃなくていい。ひとつだけ「おいしいね」と言える瞬間があれば、その日の食卓は成功です。焦らず、長い目で習慣をつくっていく感覚が大切だと思っています。
週に一度の「特別な食卓」をつくる
毎日を変えようとすると続かないので、私がおすすめしているのは「週に一度だけ特別な食卓をつくる」という方法です。土曜日の昼はホットプレートでパーティーごはん、日曜の朝はみんなでパンケーキを焼く、など。
特別な日があると、「今週も楽しかったことがあった」という感覚が家族に残ります。子どもはこういう繰り返しのイベントが大好きで、「今週のホットプレートは何にする?」と楽しみにしてくれるようになります。
食卓の楽しさは、毎日の小さな積み重ねからしか生まれません。でも、その積み重ねは決して難しくない。「今日は一言だけ『おいしいね』と言ってみよう」くらいの小さな一歩から始めてみてください。気づいたら食卓が、家族みんなのほっとできる場所になっているはずです。
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