「うちの子、すぐ『どうせ私なんて』って言うんです…」
先日、公園でこんな話を聞かせてもらいました。小学2年生の娘さんが、絵を描くたびに「下手だからいやだ」と言って消しゴムでぐりぐり消してしまうと。お母さんはどう声をかければいいかわからなくて、ついつい「そんなことないよ、上手だよ!」と言ってしまうけど、それも娘さんには響いていない感じがする、と困った顔をしていました。
私にも、似たような時期がありました。息子が「どうせぼくはバカだから」と言い始めたのが確か6歳のころ。誰に言われたわけでもないのに、自分でそう決めつけてしまっていて。あのとき私がやってしまった失敗も含めて、今日はじっくりお話しさせてください。
自己肯定感が低くなる子には「ある共通点」がある
自己肯定感という言葉はよく聞くようになりましたが、「じゃあ具体的にどういう状態のこと?」と聞かれると、意外と説明しにくいですよね。簡単に言うと、「自分はここにいていいんだ」「失敗しても大丈夫だ」と感じられる、心の土台のようなものです。
この土台が揺らいでいる子には、いくつかの共通パターンが見られます。
比べられることへの過敏さ
兄弟と比べられる、クラスの友だちと比べられる、あるいは親自身が「〇〇ちゃんはできるのに」と口にしてしまう。これが積み重なると、子どもは「自分は基準に届いていない存在だ」と学習してしまいます。
比べること自体は人間の自然な認知なのですが、問題は「比べた結果、あなたは足りない」というメッセージが繰り返し届いてしまうことです。子どもはそのメッセージを、言葉通りに受け取ります。
「結果」ばかりに目が向きすぎている環境
テストの点数、習い事の上達度、かけっこの順位。目に見えるものへの評価が多い環境では、子どもは「結果が出なければ自分には価値がない」と感じやすくなります。
これは親が意地悪なわけじゃなくて、むしろ子どもを応援したいからこそ結果を気にするんですよね。でもその関心のかけ方が、子どもに「プロセスより結果が大事なんだ」と伝えてしまうことがあります。
「ちゃんとしなさい」が多すぎる
「早くしなさい」「ちゃんとやりなさい」「なんでそんなことするの」。忙しい毎日の中で、つい指示や注意が多くなるのは仕方ありません。私も何度も反省してきました。
ただ、子どもの立場から見ると、自分の行動のほとんどがダメ出しされている状況って、「自分はうまくやれない存在だ」という自己イメージを強化してしまいます。否定されること自体より、否定の頻度と割合が問題なのです。
「ほめればいい」は半分しか正しくない
自己肯定感の話になると「たくさんほめてあげてください」というアドバイスをよく聞きます。これは間違いではないのですが、ほめ方を間違えると逆効果になることもあります。
「すごい!」「えらい!」だけでは伝わらない理由
「上手だね」「えらいね」「すごい!」という言葉は、子どもにとって悪い気はしません。でも少し大きくなった子、特に7歳以降くらいになると、この種の言葉が「本当にそう思ってる?」とか「次もできなかったらどう思われる?」という不安に変わることがあります。
なぜかというと、この種のほめ言葉には「評価している人がいる」という構造があるからです。評価してもらえるうちはいいけど、評価されなかったときが怖い。自己肯定感というのは、他者の評価に依存せずに「自分は大丈夫」と感じられることなので、評価型のほめ言葉だけでは根っこが育ちにくいのです。
「存在」と「行動」を分けて伝える
私が意識するようにしたのが、「あなたがいてくれてよかった」という存在への言葉と、「今日〇〇できたね」という行動への言葉を、意図的に使い分けることです。
特に存在への言葉は、子どもが何かを達成したときではなく、ふとした日常の瞬間に言うのが効きます。夕飯を一緒に食べているとき、お風呂上がりに並んでいるとき、「あなたがいると楽しいな」とか「〇〇のこと大好きだよ」とか。結果に関係なく、ただそこにいるだけで愛されていると感じられること。これが自己肯定感の一番深い部分を育てます。
プロセスをことばにする「観察ほめ」
行動への言葉として特に効果的なのが、子どもがやっていることをそのまま言葉にする関わり方です。「そこをそうやって折るんだね」「もう何分も集中してるね」「諦めずにやり直したんだ」。評価や感想ではなく、ただ見ている、ということを言葉にするだけです。
これをやると子どもはどうなるかというと、「ちゃんと見てもらえている」という安心感が生まれます。そして自分の行動を言語化してもらうことで、「自分はこういうことができる人間だ」という自己認識が少しずつ育っていきます。
失敗したときこそ、自己肯定感を育てるチャンス
子どもが泣いて帰ってきた日、テストで思った点が取れなかった日、友だちとケンカした日。こういう場面って、親としてどう関わるか本当に迷いますよね。
「大丈夫」と言いたい気持ちをいったん抑える
子どもがつらそうにしているとき、親としては「大丈夫だよ」「気にしなくていい」と言いたくなります。その気持ちはよくわかります。でも子どもの立場から見ると、「大丈夫じゃないから泣いてるのに」と感じることがあります。
気持ちを否定されると、子どもは「この感情を持っちゃいけないんだ」と学んでしまいます。感情を抑えることを覚えた子は、自分の内側の声が聞こえにくくなっていきます。自分の感情すら信頼できないのに、自己肯定感は育ちません。
まず「悔しかったね」「悲しかったよね」と、子どもが感じていることを言葉にしてあげる。これだけで子どもの表情がふっと緩むことが多いです。
失敗を「情報」として扱う話し方
感情を受け止めたあとで、「じゃあどうしようか」という話ができると理想的です。このとき大切なのが、失敗を「ダメなこと」として扱わず、「次に活かせる情報」として話すことです。
「なんでできなかったの?」という問いかけは、子どもに「自分の欠点を探して答えなさい」と言っているように聞こえます。それよりも「次は何をしてみようか」「どうなったら嬉しい?」という前向きな問いかけのほうが、子どもは考えやすくなります。
親が失敗を責めない姿勢を繰り返し見せることで、子どもは「失敗しても自分の価値は変わらない」と体感的に覚えていきます。これが自己肯定感の根っこです。
親自身が失敗を見せる
これは私が一番効果を感じた方法かもしれません。親が失敗したとき、「あー、ちょっと失敗しちゃった。どうしようかな」と声に出して見せることです。
子どもは親の姿から本当に多くのことを学びます。親が失敗したときに取り乱したり、強く自分を責めたりする姿を見せていると、子どもは「失敗はそんなに怖いものなんだ」と学んでしまいます。逆に「失敗したけど、また考えればいいか」という姿を見せると、「失敗はそれほど怖いものじゃない」と感じられるようになります。
日々の「小さな関わり」が自己肯定感をつくる
ここまで読んで「なんだか難しそう」と感じた方もいるかもしれません。でも実は、自己肯定感を育てるのに特別なイベントや時間は必要ありません。毎日の小さな関わり方の積み重ねが、何より大切です。
子どもの「決める」を増やす
「今日の服どっちにする?」「おやつ、りんごとバナナどっちがいい?」「今日の夕飯のリクエストある?」こういった小さな選択を日常に増やすことが、自己肯定感の育ちにつながります。
なぜかというと、「自分が選んだ」という経験が積み重なると、「自分には判断する力がある」という感覚が育つからです。親が何でも決めてしまう環境では、子どもは「自分の判断は当てにならない」と感じやすくなります。
もちろん安全に関わることや、家族のルールとして決まっていることは別です。でも日常のちょっとした場面では、できる限り子どもに選ばせてあげてほしいと思います。
「一緒に」やる時間を作る
料理、掃除、買い物、庭の草取り。何でもいいのですが、親と子どもが一緒に何かをする時間は、子どもの自己肯定感にじわじわと効きます。
「役に立てた」という感覚は、子どもにとって大きな喜びです。「手伝ってくれて助かった」「〇〇がいてくれると早く終わる」という言葉は、子どもに「自分は誰かの役に立てる存在だ」という感覚を育てます。これは「すごいね」というほめ言葉とは別の、もっと深いところにある自己有用感です。
スマホを置いて目を見て話す時間
最後にこれを書かせてください。私自身、何度も失敗してきたことです。
子どもが話しかけてきたとき、スマホを見ながら「うんうん」と返事をしてしまうことがあります。子どもはそのとき、何を受け取っているかというと「自分の話は、スマホより大事じゃないんだ」というメッセージです。
1日に数分でいいので、スマホを置いて子どもの目を見て話す時間を作ってほしいと思います。「今、あなたに向き合っている」という態度が、「あなたは関心を向けてもらえる存在だ」という感覚を子どもに届けます。これが積み重なると、子どもは「自分は大切にされている」という確信を持てるようになります。
自己肯定感は「今日から」育てられる
自己肯定感というと、幼少期にもう決まってしまうイメージを持つ方もいますが、そんなことはありません。4歳でも、8歳でも、12歳でも、今この瞬間から関わり方を変えることができます。
そして何より伝えたいのは、完璧にやろうとしなくていい、ということです。昨日イライラして怒鳴ってしまっても、今日「昨日は怒りすぎてごめんね」と言える親の姿を見せることが、むしろ子どもに「謝ることは恥ずかしくない」「関係は修復できる」ということを教えます。
私も今でも失敗します。でも「またやってしまった」と思った翌朝に、子どもとちゃんと話して、やり直す。その繰り返しが、私たち親子の関係をつくってきました。
子どもに「どうせ自分なんて」と言ってほしくないなら、親である私たちが「どうせ自分なんてうまくできない」と思わないことも大切です。完璧な親にならなくていい。子どもを信頼して、自分も信頼して、今日できることを一つずつ。それで十分です。
Photo by Olivia Anne Snyder on Unsplash