「もうすぐ小学生なのに、ひらがなが全部書けなくて大丈夫かな」「一人でトイレに行けるのか心配」「うちの子、先生の話をちゃんと聞けるんだろうか」——。就学前の時期になると、こういった不安が頭の中をぐるぐる回り始めませんか?

私自身、長女が入学する前の年は本当に焦っていました。周りのママ友の子が公文に通っていると聞けば「うちも行かせなきゃ」と思い、お勉強ドリルを買ってきては子どもに嫌がられ、どんどん自信をなくしていったんです。でも実際に入学してみたら、「あんなに心配しなくてよかった」ということと、「これだけは早めにやっておけばよかった」ということが、はっきり見えてきました。

この記事では、3人の子どもを育ててきた経験から、本当に小学校入学前に大切なことをお伝えします。「勉強できる子にしなきゃ」というプレッシャーではなく、「子どもが学校生活を楽しめる土台を作る」という視点で読んでいただけたら嬉しいです。

「勉強より先に」身につけてほしい生活習慣

小学校の先生に話を聞くと、口をそろえておっしゃるのが「勉強より生活習慣の方が大事」ということです。ひらがなが書けなくても学校で教えてもらえますが、毎朝自分で起きられない、忘れ物が多い、給食をひとりで食べるのに時間がかかりすぎるといったことは、日々の学校生活に直接響いてきます。

一人で起きて、準備できる力をつける

小学校は幼稚園・保育園と違って、登校時間が決まっています。しかも低学年のうちは集団登校のことも多く、「遅刻した=班のみんなに迷惑をかけた」という経験がプレッシャーになる子もいます。

入学前に練習してほしいのは、「朝のルーティンを自分で回す力」です。起きる→着替える→朝ごはんを食べる→歯磨きをする→ランドセルを持って玄関に立つ、この流れを、親があれこれ声をかけなくても自分でできるようになっておくと、入学後がぐっと楽になります。

うちでやってよかったのは、朝のやることリストを絵で描いて貼っておくことでした。文字が読めなくても絵なら分かる、という発想で、冷蔵庫の横に貼り付けておいたんです。最初は「次はこれだよ」と指さすだけで子どもが動いてくれて、だんだん自分で確認するようになっていきました。

「自分のことは自分でやる」を当たり前にする

入学前によく聞く後悔の声が、「もっと早くから自分でやらせればよかった」というものです。脱いだ服をたたむ、使ったものを元の場所に戻す、ランドセルの中身を自分で確認するといった小さな習慣が、学校生活の自立に直結します。

特に「ランドセルの準備を自分でする」は意識してほしいポイントです。親が毎晩準備してあげていると、子どもは学校に着いてから「あ、〇〇がない」と気づいても、誰かがなんとかしてくれると思いがちです。失敗を経験しながら「自分で確認しなきゃ」と覚えていくのが、小学生としての自立の第一歩だと思っています。

睡眠時間を確保する仕組みを作る

小学生は9〜10時間の睡眠が理想と言われています。夜更かしが続くと授業中に眠くなり、集中力が落ち、勉強についていけなくなる——という悪循環が起きやすいです。

就学前のうちに「何時には布団に入る」というリズムを体に染み込ませておくと、入学後もスムーズに対応できます。我が家は入学の3ヶ月前から就寝時間を少しずつ前倒ししていきました。テレビやタブレットの時間を決めるのも、この時期にルール化しておくといいと思います。

学校生活で「困らない」ためのコミュニケーション力

「うちの子、人見知りだから心配」「先生に質問できるかな」という声もよく聞きます。コミュニケーション力というと難しく聞こえますが、小学校入学前に必要なのは高度なものではありません。日常の中でできる、シンプルな練習があります。

「助けて」と言える子にする

困ったときに手を挙げて先生に聞ける、友達に「貸して」「ありがとう」が言える——これだけで、学校生活はずいぶん変わります。逆に、この言葉が出てこない子は、困ってもひとりで抱え込み、やがて学校が嫌いになってしまうことがあります。

家でできる練習は、子どもが困っているとき、すぐに手を貸さないことです。「どうすればいい?」と聞く前に「どうしたい?」と子どもに考えさせ、「じゃあ、こうお願いしてみて」と言葉を一緒に考えるだけで、「伝える力」は少しずつ育っていきます。

話を「最後まで」聞く練習をする

小学校の授業は、先生の話を一定時間座って聞くことが基本です。幼稚園・保育園とは比べものにならないほど「聞く時間」が長くなります。

これが苦手な子の多くは、話の途中で口をはさんだり、関係ないことを考え始めたりします。家での食事中に「今日あったこと、順番に話してみて」と練習させたり、読み聞かせを最後まで静かに聞いてもらう習慣をつけたりすることが、地味ですが効果的です。

私の次男は特に落ち着きがなく、本当に苦労しました。でも毎晩5分でいいから「今日の出来事を話す時間」を作っていたら、人の話を聞きながら自分の番を待てるようになっていったんです。焦らずコツコツが大事だと実感しました。

「読み書き・数」はどこまで必要か

一番親が気にするのが、学習面のことでしょう。「ひらがなは全部書けないといけない?」「計算は?」「英語は?」という質問は、入学前のママ友の集まりで必ず出てきます。

ひらがなは「読める」レベルでOK

結論から言うと、入学時点でひらがながすべて書けなくても、全く問題ありません。学校の国語の授業で、最初にひらがなを丁寧に教えてくれます。むしろ「変な書き順が染み付いている」方が、直すのに苦労するくらいです。

ただし「読む」ことは、ある程度できていると安心です。教室に貼られた時間割を読んだり、連絡帳を見たりする場面があるので、自分の名前と基本的な文字が読めると、子ども自身が困らずに済みます。

書く練習をするなら、書き順が正しいものを使ってください。お手本なしに自己流で練習させると、後から直す方が大変です。市販のひらがなドリルを1冊用意して、正しい書き方を確認しながら丁寧に進めるだけで十分です。

数は「10までの概念」を遊びの中でつかむ

算数については、「10までの数を理解している」「多い・少ないが分かる」「順番が分かる」くらいが入学前の目安です。計算の練習は不要です。

数の感覚は、勉強として教えるより遊びの中で育てる方が自然に身につきます。おやつを「3個ずつ分けよう」「どっちが多い?」と声をかけながら数えたり、カードゲームやすごろくで数を扱ったりする機会が、算数の基礎になっていきます。

うちの子たちは、おつかいをさせることで数の感覚がぐんと育ちました。「100円持って、50円のジュースを買っておいで。おつりはいくらもらえる?」というやりとりが、ドリルより何倍も効果的でした。

「勉強すること」が嫌いにならないことが一番大事

学習面で一番気をつけてほしいのが、入学前の詰め込みで「勉強って嫌い」という印象を植え付けてしまうことです。特に、親が焦って無理やりやらせると、机に向かうことそのものを嫌いになる子がいます。

「知ることって楽しい」「できると嬉しい」という感覚を育てることが、長い目で見たら一番の学力の土台になります。正解したときに一緒に喜ぶ、失敗しても責めない、この2つだけを意識するだけで、学習への態度はずいぶん変わってきます。

子どもの「心の準備」を一緒にする

準備の中で見落とされがちなのが、子ども自身の気持ちの準備です。環境の変化に敏感な子は、「小学校に行くのが怖い」「ちゃんとできるか不安」という気持ちを抱えていることがあります。それを「大丈夫だよ」の一言で片付けてしまうと、子どもは不安を話せなくなってしまいます。

「小学校ってこんなところ」を具体的に伝える

子どもが不安になるのは、「知らない」からです。どんな場所で、どんなことをするのかが分かれば、それだけで気持ちが楽になります。

入学前に学校見学や入学説明会がある場合は、できれば子どもも一緒に連れて行きましょう。「ここがあなたの教室だよ」「ここでご飯食べるんだよ」と実際の場所を見ておくだけで、子どもの「知らない怖さ」がかなり和らぎます。絵本や動画で小学校の様子を事前に見せてあげるのも効果的です。

「嫌なこと・困ったこと」を話せる関係を作っておく

入学後、子どもが学校で嫌なことがあったとき、それを家で話せる環境があるかどうかが、とても大切です。いじめや友人関係のトラブルに早めに気づけるのも、日頃から「話してくれる」関係ができているかどうかにかかっています。

入学前から「今日嫌だったことは?」「困ったこと、あった?」と聞く習慣を作っておきましょう。楽しかったことだけじゃなく、マイナスの気持ちも話せると伝えることが大切です。「話したら怒られた」「心配させてしまった」という経験が積み重なると、子どもは口をつぐんでしまいます。

私は夕食後の15分を「今日どうだった?」タイムと決めていました。親がスマホを置いて、子どもの話だけを聞く時間です。最初は「別に〜」と返ってくることも多かったけれど、続けていくうちに、ぽつりぽつりと話してくれるようになりました。

親が「焦らない」ことも、立派な準備

ここまでいろいろ書いてきましたが、最後に一番大切なことをお伝えしたいと思います。それは、親が焦りすぎないことです。

入学前に完璧に準備しようとすると、子どもにもそのプレッシャーが伝わります。「できていないことを何とかしなきゃ」という焦りは、知らず知らずのうちに子どもへの言葉がきつくなったり、できたことを褒めるより足りないことを指摘することが増えたりします。

「できないこと」より「できたこと」を積み上げる

子どもの自己肯定感は、「自分はできる」という小さな成功体験の積み重ねで育ちます。入学前に大切なのは、高いハードルをクリアさせることではなく、小さな「できた!」を毎日一緒に喜ぶことです。

「昨日はできなかったのに、今日はできたね」「難しかったのに、最後までやれたね」——こういった声かけが、子どもの「やってみよう」という気持ちを育てます。学校に入ってから壁にぶつかったとき、その経験が子どもを支えてくれます。

「うちの子のペース」を信じる

周りの子と比べてしまうのは、親なら誰でも経験することです。でも、子どもには一人ひとりの育つペースがあります。今できなくても、半年後にはあっさりできるようになることなんて、子育てでは珍しくありません。

私の三男は、ひらがなを覚えるのがとても遅くて、入学直前まで「読める字が半分しかない」状態でした。心配で心配で、近所の塾に相談に行ったくらいです。でも入学して半年も経たないうちに、本を読むのが大好きな子になっていました。子どもの「後から一気に伸びる力」って、本当に信じてあげることが大事だと思っています。

入学前の準備は、子どもを「完璧な小学生」にすることではありません。「学校って楽しそう」「行ってみたい」と思える気持ちを持って、春を迎えられるようにすること。それが一番の準備だと、10年以上の子育てを経て、今は心からそう思っています。

あなたのお子さんにとって、小学校生活が楽しいものになりますように。親である私たちも、一緒に成長していきましょう。

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