「何を買えばいいかわからない」は、みんな通る道
投資を始めようと思ったとき、最初にぶつかる壁が「結局、何を買えばいいの?」という疑問です。証券口座を開いてみたものの、画面に並ぶ無数の商品名に圧倒されて、そのままにしてしまっている人も少なくありません。
実はこれ、とても正直な反応です。選択肢が多すぎるときほど、人は動けなくなる。心理学でも「決定回避」と呼ばれる現象で、スーパーのジャム売り場に置き換えると分かりやすいです。24種類あるより、6種類のほうがよく売れるという実験結果があります。投資も同じで、選択肢を絞ることが大切です。
この記事では、投資初心者が最初に手を出すべき商品を具体的に示しながら、その理由も丁寧に説明します。読み終えたとき、「これを買えばいい」という確信が持てるようになることを目指しています。
初心者が最初に買う商品を選ぶ3つの基準
まず「どんな商品を選ぶべきか」を考える前に、「初心者にとって何が重要か」を整理しておきましょう。この3つの基準を満たす商品が、最初に買うべき商品です。
①リスクが分散されている
投資でよく使われる「卵を一つのカゴに盛るな」というたとえ話があります。一つの会社の株だけを買うと、その会社が倒産したとき全額失います。でも100社の株を少しずつ持っていれば、1社が倒産しても影響は1%です。
初心者が最初にやりがちな失敗は、気になった1社の株を集中して買うことです。SNSで話題の銘柄、「絶対上がる」と言われた株。でもどんな優良企業でも、個別株は予測不能な動きをします。最初は分散が効いた商品を選ぶことが鉄則です。
②コストが低い
投資の世界では「コストは確実なマイナスリターン」と言われます。運用益は不確実でも、手数料は確実に引かれます。長期間の運用では、このコストの差が最終的な資産に大きな差を生みます。
たとえば100万円を20年運用するとき、年間コストが0.1%と1%では、最終的な資産額に100万円以上の差が生まれることもあります。初心者はとくに、コストの低い商品を選ぶことを意識してください。
③長期保有に向いている
「短期で儲けよう」という発想は、初心者には難しいどころかむしろ危険です。プロのトレーダーでも短期売買で安定的に儲け続けることは困難で、多くの場合は損をしています。
初心者が勝てるのは「時間」を味方にする長期投資です。10年・20年とコツコツ積み上げることで、複利の力が働きます。最初に買う商品は、長期間持ち続けられるものを選びましょう。
初心者が最初に買うべき商品:インデックスファンド
3つの基準すべてを満たす商品が、インデックスファンドです。「聞いたことはあるけど、よくわからない」という人も多いと思うので、丁寧に説明します。
インデックスファンドとは何か
インデックスファンドとは、日経平均株価やS&P500などの「指数(インデックス)」に連動するように設計された投資信託です。
たとえばS&P500は、アメリカの代表的な500社の株価を合わせた指数です。S&P500に連動するインデックスファンドを買うと、アップル・マイクロソフト・アマゾン・グーグル…といった500社に自動的に分散投資していることになります。
自分でこれらの株を1株ずつ買おうとすると、莫大なお金が必要です。でもインデックスファンドなら、100円から始められるものもあります。「少額で、世界中の優良企業にまるごと投資できる」のがインデックスファンドの最大の魅力です。
なぜインデックスファンドが初心者に向いているのか
インデックスファンドには、前述の3つの基準がすべて備わっています。
まず分散の面では、日本株インデックスなら数百社、全世界株式インデックスなら数千社に分散投資できます。一社の不祥事や倒産があっても、全体への影響は限定的です。
次にコストの面では、インデックスファンドの信託報酬(持っている間にかかる年間コスト)は、低いものだと年0.1%以下のものも存在します。これは「アクティブファンド」と呼ばれる、ファンドマネージャーが銘柄を選んで運用するタイプと比べると、10分の1以下のコストであることも珍しくありません。
そして長期保有の面では、インデックスファンドは特定の企業や産業に賭けるのではなく、経済全体の成長に乗っかる商品です。短期的には上下しますが、歴史的に見ると世界経済は長期で成長してきました。「10年・20年持ち続ける」という戦略と相性が抜群です。
具体的にどのインデックスファンドを選ぶべきか
インデックスファンドが良いとわかっても、実際には「全米株式」「全世界株式」「日経平均」など複数の種類があります。初心者はどれを選べばいいのか、整理しましょう。
全世界株式インデックスファンド
迷ったら全世界株式インデックスファンドを選ぶのが、最もシンプルな答えです。日本・アメリカ・ヨーロッパ・新興国など、世界中の株式に幅広く分散投資できます。
「どこの国が伸びるか予測できない」という悩みをそのまま解決してくれる商品です。アメリカが低迷してもヨーロッパが好調なら補い合う。特定の国や地域に偏らずに済むため、最初の一本として非常に優秀です。
代表的な商品としては「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が有名で、投資家の間では「オルカン」と呼ばれ親しまれています。信託報酬は年0.05775%という低水準で、長期保有のコストを最小限に抑えられます。
全米株式インデックスファンド(S&P500含む)
「アメリカ経済の成長に集中して乗りたい」という人には、全米株式やS&P500連動のファンドも有力な選択肢です。
アメリカは長らく世界経済をリードしてきており、GAFAMのような巨大テック企業も多く含まれます。過去数十年の実績で言えば、全世界株式よりもS&P500のほうが高いリターンを出してきた時期もあります。
ただし「過去の成績が未来を保証しない」のは投資の大原則です。アメリカ集中はリターンが高い一方、アメリカ経済が低迷したときのリスクも大きくなります。「全世界株式か全米株式か」は投資家の間でも長年議論されているテーマですが、初心者は全世界株式から始めるほうが心理的な安定感を保ちやすいです。
日本株インデックスファンドは補助的に
日経平均やTOPIXに連動する日本株インデックスファンドは、全世界株式や全米株式に比べると成長性の面では見劣りする部分があります。ただし「為替リスクを避けたい」「日本経済を応援したい」という気持ちがある人は、全世界株式をメインにしながら一部を日本株インデックスに充てるという組み合わせも悪くありません。
最初の一本としてではなく、ポートフォリオの一部として考える位置づけがよいでしょう。
どこで買えばいいのか:NISA口座を活用する
インデックスファンドを選んだら、次は「どこで買うか」です。ここで絶対に押さえておきたいのがNISA口座の活用です。
NISAとは何か
NISAとは、投資で得た利益に対して税金がかからない制度です。通常、株式や投資信託の売却益・分配金には約20%の税金がかかります。100万円の利益が出ても、手元に残るのは約80万円という計算です。
NISAを使えば、この約20%の税金がゼロになります。長期間にわたって複利効果で増えていく資産に対して、税金がかからないというのは非常に大きなアドバンテージです。
投資初心者はまずつみたて投資枠を使う
現行のNISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類があります。初心者にとって使いやすいのはつみたて投資枠です。
つみたて投資枠で購入できる商品は、金融庁が「長期の積立・分散投資に適している」と認めたものに限られています。つまり、初心者が間違って怪しい商品を買ってしまうリスクが低くなっています。先ほど紹介した全世界株式インデックスファンドも、つみたて投資枠で購入できます。
年間120万円まで非課税で投資でき、毎月一定額を自動で積み立てる設定もできます。「毎月1万円を自動で積み立てて、あとは放置」という運用スタイルが実現できるため、忙しい人にも向いています。
どの証券会社で開くか
NISA口座を開く証券会社は、ネット証券がおすすめです。SBI証券や楽天証券が有名で、取り扱い商品の豊富さ、手数料の安さ、使いやすさのバランスが優れています。
銀行窓口や対面型の証券会社でも買えますが、手数料が高めだったり、担当者が高コストなアクティブファンドを勧めてくることがあるため、初心者ほどネット証券で自分のペースで選ぶほうが賢明です。
最初はいくらから始めればいいのか
「どのくらいのお金を用意すればいい?」という疑問も多いです。結論を言うと、最初は少額から始めるほうがいいです。
100円から買えるインデックスファンドもありますが、現実的には月3,000円〜1万円程度からスタートする人が多いです。大切なのは金額よりも「続けること」です。
たとえば毎月3万円を全世界株式インデックスファンドに積み立てた場合、年利5%で運用できたとすると、20年後には約1,240万円になる計算です(元本は720万円)。毎月3万円がずっと続けられない人は、まず月1万円から始めてみてください。続けられる金額からスタートすることが、長期投資では何より重要です。
また、投資に回すお金は「当面使わないお金」に限定することが大原則です。生活費の3〜6ヶ月分は現金として手元に残し、それ以上の余裕資金を投資に回すようにしましょう。急に現金が必要になって、下がったタイミングで売らざるを得ない状況を避けるためです。
「積み立てて放置」が最強の戦略である理由
インデックスファンドをNISAで積み立て始めたら、基本的にやることはほとんどありません。毎月の積み立て設定をしたら、あとはほったらかしでいいのです。
むしろ頻繁に値動きを確認して、「下がったから売ろう」「上がってきたから買い増そう」と動くほど、パフォーマンスが悪化することが多いです。これは感情が邪魔をするからです。
投資の世界では「Time in the market beats timing the market(市場に居続けることが、タイミングを計ることに勝る)」という格言があります。完璧なタイミングで買おうとするより、早く始めて長く持ち続けるほうが結果が出やすい、という意味です。
相場が下がったときこそ、安く買えるチャンスです。毎月定額を積み立てると、価格が高いときは少ない口数しか買えず、価格が低いときは多くの口数を買えます。これを「ドルコスト平均法」といい、長期的に購入コストを平準化する効果があります。
最初に「やってはいけないこと」も覚えておく
正しい商品を選ぶと同じくらい大切なのが、やってはいけないことを知ることです。
個別株の一点集中買いは、初心者が最も避けるべき行動です。「この株は絶対上がる」という確信があっても、それはプロでも予測できません。個別株は上げ下げが激しく、資産の大部分を一つの銘柄に集中させると、精神的なダメージも大きくなります。
FXや仮想通貨への集中投資も初心者向けではありません。これらは値動きが非常に激しく、短期間で資産の半分以上を失うことも珍しくないハイリスクな商品です。余剰資金のごく一部を「勉強代」として試してみる分には否定しませんが、メインの資産形成の手段にするのは避けましょう。
「元本保証」をうたう怪しい投資話にも注意が必要です。「必ず増える」「リスクがない」という商品は存在しません。高いリターンには必ず高いリスクが伴います。SNSやオンラインサロンで見かける「絶対儲かる」系の情報には、特に警戒してください。
まず一歩を踏み出すことが大切
長々と説明してきましたが、要点は非常にシンプルです。
投資初心者が最初に買うべき商品は、全世界株式インデックスファンド(またはS&P500連動ファンド)です。これをNISAのつみたて投資枠を使って、毎月コツコツ積み立てる。これだけです。
難しい分析も、毎日のチャートのチェックも、最初は必要ありません。シンプルな商品を選んで、時間を味方にする。投資で成功している多くの人が、実はこのシンプルな戦略を続けているだけです。
「完璧な準備ができてから始めよう」と思っていると、気づいたら数年が経っていた、ということになりかねません。投資は始めた日から時間が働き出します。少額でも、今日から始めることに意味があります。
証券口座の開設は最短数日でできます。まずはネット証券で口座を開き、月1万円のつみたて設定をする。それが投資の第一歩として、十分すぎるほど立派なスタートです。
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