「無償化になったって聞いたけど、実際どのくらいかかるんだろう?」入園前の説明会から帰ってきたパパが、神妙な顔でそうつぶやいていたのを今でも覚えています。無償化という言葉だけが独り歩きして、実際の負担感がまったくイメージできない、というご家庭は本当に多いです。
私自身、上の子が入園するとき、給食費や行事費がどんどん引き落とされるのを見て「あれ?無償化って何だったっけ?」と混乱した経験があります。下の子のときはある程度わかっていたつもりでも、認可外施設に一時期お世話になったときに仕組みが違って、また頭を抱えました。
この記事では、幼児教育・保育の無償化がどんな仕組みなのか、どこが「無料」でどこが「有料」なのか、そして保育園と幼稚園で何が違うのかを、できるだけ具体的にお伝えします。読み終えたあとに「なんだ、そういうことか」とすっきりしてもらえたら嬉しいです。
無償化とはどの範囲が対象なのか、まず整理しよう
「幼児教育・保育の無償化」という制度は、国が定めた年齢要件と施設要件を満たしたとき、利用料の一部または全額を国と自治体が負担するというものです。「一部または全額」という曖昧さがそもそも混乱の元なので、ここをしっかり押さえておきましょう。
対象になる年齢と施設の種類
無償化の対象になるのは、原則として3歳から5歳のすべての子どもと、0歳から2歳の住民税非課税世帯の子どもです。年齢は「年度の始まりである4月1日時点」で判定されることが多いので、早生まれのお子さんがいるご家庭は注意が必要です。
施設の種類によって、無償化の扱いが少しずつ違います。大きく分けると、認可保育所・認定こども園・幼稚園・地域型保育事業(小規模保育など)は対象になります。一方、認可外保育施設や企業主導型保育事業は「上限額つきの補助」という形で対象になりますが、後述するように全額補填ではないケースも多いです。
「無償」になるのは保育料だけという現実
ここが最も誤解されている部分です。無償化で免除されるのは、国が定めた「保育料(利用料)」のみです。以下の費用は無償化の対象外で、引き続き自己負担となります。
- 給食費(主食費・副食費)
- 制服・体操服・通園かばんなどの購入費
- 遠足・行事の費用
- 絵本や教材費
- 通園バス代
- 延長保育・一時預かりの費用
- 施設独自の課外活動費(英語・体操・音楽など)
私の子どもが通った幼稚園では、入園時にかかった費用だけで制服一式・かばん・上履き・お道具箱セットなどで5万円近くかかりました。無償化の話を聞いて期待していた分、最初の請求書を見たときのショックは結構大きかったです。毎月の実費負担は給食費を含めると5,000円〜15,000円前後になることも珍しくありません。
認可保育所と幼稚園では仕組みがどう違うのか
保育園と幼稚園では、そもそも管轄する省庁や利用する制度が異なるため、費用の仕組みも少し変わってきます。同じ「無償化」という言葉でも、手続きや補助の流れが違うので注意が必要です。
認可保育所の費用と補助の流れ
認可保育所(いわゆる認可保育園)の場合、保育料は各市区町村が世帯の所得をもとに決定します。同じ保育園でも、隣の家庭と保育料が違うのはそのためです。無償化により、3歳以上のクラスに在籍していれば、この保育料部分がゼロになります。
ただし、給食の副食費(おかずやおやつ代)は実費が発生します。これは月額4,500円程度が標準とされており、施設によって多少前後します。なお、ひとり親世帯や生活保護世帯などは副食費の免除制度がある自治体もあるので、役所の担当窓口に確認する価値があります。
手続き的には、多くの場合、保育料は市区町村が施設に直接支払う形になるため、保護者が自分で申請書を出すというより、入園手続きの中で自動的に適用されることが多いです。
幼稚園の費用と補助の受け取り方
幼稚園は私立・公立によって異なりますが、私立幼稚園の場合、施設設定料金から一定の上限額まで補助が出る形になります。上限額は月額2万5,700円(国の定める上限)と定められており、それを超える保育料分は自己負担になります。
私立幼稚園の中には、施設の充実度や教育内容に応じて月額3万〜4万円台の保育料を設定しているところもあります。その場合、上限を超えた分は保護者が払う必要があります。「無償化なのにうちは毎月1万円以上払っている」という声をよく聞くのは、こうした理由からです。
また、幼稚園では施設によって「預かり保育」も無償化の対象になる場合があります。就労などの理由で保育の必要性が認定されると、月額1万1,300円を上限に預かり保育料も補助されます。この認定を受けるには自治体への申請が必要です。共働きで幼稚園に通わせているご家庭は、この手続きを忘れずに確認してほしいポイントです。
認定こども園はどちらの仕組みになる?
認定こども園は幼稚園と保育所の機能を合わせ持つ施設で、子どもがどちらの「号認定」を受けているかによって仕組みが変わります。1号認定(幼稚園部分)は幼稚園の仕組みに準じ、2号・3号認定(保育所部分)は保育所の仕組みに準じます。入園時に必ず認定区分を確認しておきましょう。
認可外保育施設の補助は上限つきで全額ではない
認可外保育施設(ベビーシッターや認証保育所なども含む)を利用しているご家庭には、補助の仕組みが少し違います。実費の全額補填ではなく、「上限額の範囲内で補助が出る」という形です。
補助の上限と自己負担の発生
3歳から5歳の認可外保育施設利用者には月額3万7,000円、0歳から2歳の住民税非課税世帯には月額4万2,000円が上限の補助が出ます。認可外施設は料金設定が施設ごとに異なり、都市部では月額6万〜10万円を超えるケースもあります。その場合、上限を超えた部分はすべて自己負担です。
認可外でも「自治体が独自に認定した施設(認証保育所など)」に通っている場合、自治体独自の補助が上乗せされることもあります。これは地域によって制度がかなり異なるため、居住地の役所窓口か自治体ウェブサイトで必ず確認してください。
ベビーシッターや一時預かりの扱い
認可外施設の補助対象には、一定の要件を満たしたベビーシッターや一時預かり事業も含まれます。ただし、すべての事業者が対象になるわけではなく、都道府県に届出を出している施設・事業者に限られます。ベビーシッターを定期的に利用しているご家庭は、利用しているサービスが届出済みかどうかを事前に確認しておくと安心です。
実際にかかる費用の目安を知っておこう
制度の仕組みはわかっても、「結局うちはいくらかかるの?」というのが一番気になるところだと思います。あくまで目安ですが、施設の種類別に月々の実費負担感を整理しておきます。
認可保育所(3歳以上)の月々の実費
保育料は無償化で0円になりますが、以下が実費として残ります。
- 給食費(副食費):3,000円〜5,000円程度
- 教材費・行事費:1,000円〜3,000円程度(月平均)
- 延長保育を使う場合:500円〜3,000円程度(時間や回数による)
これらを合計すると、月に5,000円〜10,000円程度は見ておく必要があります。さらに年度始めには制服や用品の購入費がかかる施設もあります。
私立幼稚園(3歳以上)の月々の実費
私立幼稚園は施設の設定料金によって自己負担額が大きく変わります。月額2万5,700円以内の保育料であれば実質0円になりますが、それを超える施設では差額が毎月発生します。
- 給食費:4,000円〜6,000円程度
- バス代:5,000円〜10,000円程度(利用する場合)
- 教材費・課外活動費:3,000円〜10,000円以上(施設により差が大きい)
- 保育料超過分:0円〜数千円〜1万円以上(施設による)
私の子どもが通った幼稚園は比較的シンプルな費用体系でしたが、それでも毎月1万2,000円前後は実費がかかっていました。英語や体操などの課外活動が充実した幼稚園を選ぶと、月2万円を超えることも珍しくありません。
入園前に確認しておきたいこと
実際に園を検討するとき、説明会で必ず確認してほしいのは以下の点です。保育料だけでなく、これらをすべてトータルして月々の支出を計算すると、家計の見通しが立てやすくなります。
- 月々の給食費・おやつ代の金額
- 通園バスの有無と費用
- 制服・用品の購入先と概算金額
- 課外活動(英語・体操など)の費用と任意参加か必須かの確認
- 遠足・発表会など行事の実費の目安
- 延長保育の料金体系
「全部無料ですか?」と直接聞くのが一番確実です。遠慮せず聞いてしまって大丈夫です。私も最初は気が引けましたが、聞いてみると丁寧に教えてくれる園がほとんどでした。
申請や手続きで見落としがちなポイント
無償化は「申請しなくても自動的に適用される」と思っているご家庭が意外に多いのですが、施設の種類や補助の種類によっては自分で申請が必要なものもあります。損をしないためにも、手続き面も確認しておきましょう。
幼稚園の預かり保育補助は申請が必要
前述のとおり、幼稚園での預かり保育を無償化の対象にするには、市区町村から「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。共働きや介護・病気など、一定の理由があれば認定を受けられます。この申請を忘れたまま預かり保育を使い続けると、補助が受けられず全額自己負担になってしまいます。
入園後に就労状況が変わった場合(仕事を始めた・辞めたなど)も、認定内容の変更が必要になることがあるので注意してください。
認可外施設の補助は施設の届出確認から
認可外施設の無償化補助を受けるには、利用している施設が「都道府県への届出」をしていることが条件です。届出をしていない施設は補助の対象外になります。入園前または利用開始前に、施設に「都道府県への届出はされていますか?」と確認する習慣をつけてください。
市区町村独自の上乗せ補助を見逃さない
国の制度とは別に、自治体が独自に給食費の補助や用品購入費の助成をしているケースがあります。こうした情報は市区町村の広報誌や子育て支援の担当窓口に問い合わせるのが一番確実です。引っ越しを検討しているご家庭は、移住先自治体の子育て支援制度の比較も視野に入れてみてください。自治体によって手厚さにかなり差があります。
私が住む地域では、数年前から給食費の一部を自治体が負担する制度が始まり、毎月の実費が少し減りました。こういった制度は黙っていると見逃してしまうので、入園後も定期的に窓口や園からのお便りをチェックする習慣をつけておくと良いと思います。
幼稚園・保育園の費用は「無償化=ゼロ円」ではないけれど、制度を正しく理解して実費の見通しを立てておけば、家計の不安はずいぶん小さくなります。入園前に一度、給食費・バス代・課外活動費を含めた「トータルの月額」を試算してみてください。それだけで、漠然とした不安がぐっと具体的な数字に変わります。どの施設を選ぶかの判断材料にもなるので、ぜひ説明会でしっかり確認してみてくださいね。
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