「うちの子、まだ全然しゃべらないんだけど…大丈夫かな」
検診のたびに心臓がドキドキして、同じ月齢の子が「まんま」「ばいばい」と言っているのを見るたびに、胸がちくっとする。そんな経験、私にもありました。
長女が1歳半健診を受けたとき、「指差しがまだできていない」と保健師さんに言われて、その日の帰り道はずっと泣いていました。「私の育て方が悪かったのかな」「何か見落としていたのかな」と、頭の中がぐるぐるして。
今だから言えることがあります。「言葉が遅い」という一点だけで、その子の将来を決めることはできません。でも、だからといって「様子を見てればいい」と放置するのも違う。大切なのは、わが子の今の状態をちゃんと見て、必要なサポートをしてあげることです。
この記事では、言葉の発達の基本的な流れから、家庭でできる関わり方、専門家への相談タイミングまで、私が実際に経験したことと学んできたことをお伝えします。
「言葉が遅い」の前に知っておきたい、発達の基本的な流れ
月齢ごとの目安はあくまで「目安」
まず最初に伝えたいのは、発達の目安はあくまでも「多くの子がこの時期にこんな様子が見られますよ」という統計的な話だということです。個人差がとても大きいのが乳幼児期の特徴で、早い子・ゆっくりな子、どちらも普通の範囲に含まれることがほとんどです。
一般的な言葉の発達の流れをざっくり確認すると、生後6〜9か月ごろには「あーあー」「ばばば」といった喃語(なんご)が出始め、1歳前後に「ママ」「パパ」などの意味のある言葉が出てきます。1歳半ごろには10語前後の単語が使えるようになり、2歳ごろには「ワンワン きた」などの二語文が出てくるのが目安と言われています。
ただし、これはあくまでも中間値のような話です。1歳半でほとんどしゃべらなくても、2歳を過ぎてから一気に言葉が爆発する子もいますし、3歳まで単語がわずかでも、その後ぐんぐん追いつく子もいます。
言葉の前に育つ「コミュニケーションの土台」に注目して
言葉の発達を考えるときに、私が一番大切だと思っているのが「言葉が出る前の土台ができているか」という視点です。
たとえば、目が合うか。呼ばれたときに振り向くか。指差しをするか。大人の表情や声のトーンに反応するか。こういったやりとりの積み重ねが、言葉を育てる基盤になっています。
言葉はまだ出なくても、にこにこしながら大人の顔を見て、興味のあるものを指差しで伝えようとしている子は、コミュニケーションの芽がちゃんと育っています。逆に、言葉が出ていても目が合いにくかったり、人より物への興味が強い場合は、丁寧に観察が必要なことがあります。
男の子と女の子、きょうだいの有無でも変わることがある
これは統計的な傾向の話ですが、一般的に女の子のほうが言葉の発達が早い傾向があると言われています。また、第一子よりも第二子以降のほうが、お兄ちゃん・お姉ちゃんのやりとりを聞いて育つせいか、言葉が早く出やすいとも言われています。
周りの同月齢の子と比べて不安になるのは当然の気持ちですが、性別やきょうだい構成の違いも発達に影響することを知っておくと、少し楽になれることもあります。
家庭でできる言葉の発達をサポートする関わり方
「語りかけ」は量より質。短く、ゆっくり、繰り返す
「語りかけが大事」という話はよく聞きますが、「じゃあどんな語りかけがいいの?」というところまで教えてもらえないことが多いですよね。私自身、最初は「とにかくたくさんしゃべりかければいい」と思って、一人でずっとしゃべり続けていました。でも、それはちょっと違ったんです。
子どもが言葉を吸収しやすいのは、短くてシンプルな言葉を、ゆっくりはっきりと繰り返して聞いたときです。たとえばワンちゃんを見たときに「あ、ワンワン!ワンワンだね、かわいいね」と言う方が、「あ、お散歩しているワンちゃんがいるね、毛がふわふわしていてかわいいね」と長く言うよりも耳に残りやすいのです。
子どもが今見ているもの・触っているものを一緒に見ながら、シンプルな言葉で実況するのが一番効果的です。子どもの視線の先を追いかけて、「あ、ボール!」「赤いね」「転がった」と短く言い添えるだけで十分です。
「要求を先読みしすぎない」ことも大切なサポート
これは私が実際に反省したことです。長女が泣いたらすぐ抱っこ、ほしそうにしていたらすぐ渡す、という対応をずっとしていたのですが、ある保育士さんから「ちょっと待ってみることも発語のきっかけになるよ」と教えてもらいました。
子どもがジュースを飲みたそうにしていても、すぐに渡すのではなく「ジュース?飲みたいの?」と聞いてみる。「ん!」と声を出したり、指差ししたりするその瞬間を待つ。そうすることで、言葉を使う必然性が生まれるのです。
もちろん、泣いて苦しそうにしているときは別です。でも、コミュニケーションのやりとりとして「ちょっと待つ」時間を作ることは、言葉の発達を後押しする自然な方法の一つです。
絵本の読み聞かせは「読む」より「一緒に楽しむ」感覚で
絵本の読み聞かせも言葉の発達にとてもよいと言われていますが、大切なのは「ちゃんと読んであげなきゃ」と構えないことだと思っています。
私は絵本を最初から最後まで読もうとして、子どもがページをどんどんめくっても、「待って待って!」と止めてしまっていました。でも、子どもが好きなページで止まって、指差しして、一緒にそのページを眺めるだけでも十分なんです。「これ何?」「ワンワン!」と応答し合うそのやりとりの中に、言葉の芽があります。
読み聞かせは、「きれいに読む」より「一緒に楽しむ」こと。途中で何度も止まっても、逆さに持っても、ページを飛ばしても大丈夫です。
専門家に相談するタイミングと相談先の選び方
「待てばいい」と「相談する」の判断基準
「ゆっくりな子もいるから大丈夫」という声がける言葉は、確かに多くの場合正しいです。でも、その言葉に甘えすぎて相談のタイミングを逃してしまうことも、残念ながらあります。
相談を検討した方がよいサインとして、私が気をつけてほしいと思うのは以下のようなことです。
1歳を過ぎても喃語(あーあー、ばばばなどの声遊び)がほとんど出ない。1歳半を過ぎても意味のある言葉が一つも出ていない。名前を呼んでも振り向かないことが多い。目が合いにくい、または合っても一瞬で外れる。指差しや「見て見て」のアピールがほとんどない。こういった様子が複数重なっている場合は、発達に関する専門家への相談を早めにすることをお勧めします。
逆に、「ちゃんと目が合う」「指差しや身振りでコミュニケーションしようとしている」「大人の言葉をある程度理解している様子がある」という場合は、言葉が出るのが少しゆっくりなだけで、成長とともに追いついてくることも多いです。
どこに相談すればいいか、具体的な窓口
「相談しようと思っても、どこに行けばいいかわからない」という声をよく聞きます。まずは、かかりつけの小児科医への相談が一番入りやすいと思います。発達の専門家ではなくても、必要に応じて専門機関を紹介してもらえますし、「気のせいかな」という段階でも気軽に話せます。
地域の保健センターの発達相談も、無料で利用できる頼れる窓口です。1歳半健診や3歳健診でのフォローアップとして相談できるほか、健診と関係なく相談の予約を取ることもできます。私も長女の件で何度も相談に行きましたが、丁寧に話を聞いてもらえてとても助かりました。
さらに、言語聴覚士(ST)のいるリハビリ施設や発達支援センターでは、より専門的なアドバイスをもらえます。「うちの子、そこまでじゃない気がして…」と躊躇する方もいますが、診断がついていなくても相談・利用できる施設も多いので、気になるなら問い合わせてみてください。
「相談する=問題がある」ではない、という考え方
専門家に相談することを「うちの子に問題があるということになってしまう」と感じて、踏み出せないご家族もいます。気持ちはとてもよくわかります。私も最初はそうでした。
でも、早めに相談することで得られるのは「診断」ではなく「その子に合った関わり方のヒント」です。相談して「今は様子を見ましょう」という結果になっても、それはそれで大切な情報です。何もしなかったときの後悔より、「相談してよかった」という経験の方が、ずっと子育てを楽にしてくれます。
「うちだけじゃない」と知ってほしい、先輩ママの経験談
長女が2歳半まで単語数語だった、私自身の話
長女は2歳半になっても単語が10語に満たない状態でした。「ママ」「まんま」「わんわん」くらいで、二語文なんて全く出てこない。同じ保育園のクラスの子たちが「○○ちゃんとあそんだ」「きょうね、ブランコのったんだよ」と話しているのを聞くたびに、胸が痛かったです。
発達支援センターに相談し、言語聴覚士の先生に家でできる関わり方を教えてもらい、週に一度の親子療育にも参加しました。療育では「待つ」「繰り返す」「子どもの興味に合わせる」という基本的なことを丁寧に教えてもらいました。
3歳を過ぎたころから、少しずつ言葉が増え始め、3歳半には二語文が出るようになりました。4歳になったら普通に会話ができるようになり、今では「ちょっとうるさいくらいしゃべる」子になっています。
あのころの不安を、今の娘を見ながら思い出すと、「心配しすぎなくてよかった」とも「でも早めに動いてよかった」とも思います。両方、本当のことです。
療育は「特別なこと」ではない
「療育」という言葉に、ハードルを感じる方もいると思います。でも実際に体験してみると、親子一緒に遊びながら発達をサポートする場所で、「特別な訓練」というよりも「丁寧な遊び」に近いものでした。
先生たちは子どものペースに合わせてくれて、できないことを責めるのではなく、できていることを丁寧に積み上げていく関わり方をしてくれます。親向けに「家でこう関わってみてください」というアドバイスをくれることも多く、家庭での関わり方が変わるきっかけにもなりました。
療育に通う=障害がある、ではありません。発達の個性に合ったサポートを受ける選択肢の一つです。気になる方は「療育 ○○市」で検索してみてください。地域によって施設の種類や利用方法は異なりますが、多くの場合、まずは相談から始められます。
言葉の発達に不安を感じているパパ・ママへ
「心配する気持ち」はそのままでいい
「心配しすぎないで」「ゆっくりな子もいるよ」という言葉は、励ますつもりで言われるものです。でも、心配している気持ちを「心配しすぎ」と片付けられると、余計につらくなることがあります。私もそうでした。
心配する気持ちは、子どものことをちゃんと見ているからこそ生まれるものです。「なんか違うかも」「もう少しゆっくりかも」というアンテナは、大切にしていい感覚です。その気持ちをきっかけに動いてみることが、子どものために一番になることもあります。
夫婦で「見方」が違っても、話し合うことが力になる
よくあるのが、ママが「相談に行きたい」と思っているのに、パパが「そんな大げさな」「男の子は遅いって言うし」と乗り気でないパターンです。
そのすれ違いが起きやすいのは、パパが子どもと一緒にいる時間が短く、日常の小さな変化に気づきにくいことが一因でもあります。「こういう場面でこんなことがあった」と具体的に伝えながら、「一緒に相談に行ってみることが子どものためになると思う」と話すことが、話し合いのスタートになりやすいです。
専門家に「大丈夫ですよ」と言ってもらって二人で安心できる、という結果もあります。「相談に行く=心配しすぎ」ではなく「相談に行く=子どものことを一緒に考える」という気持ちで、夫婦で足を運んでみてください。
今できることを一つだけやってみる
発達のこと、言葉のこと、相談のこと、どれも考え始めると頭がいっぱいになります。でも、一度に全部やろうとしなくていいんです。
今日からできることを一つだけ選ぶとしたら、「子どもが見ているものを一緒に見て、一言だけ言葉にしてあげる」こと。それだけでいいです。難しいことは何もありません。「ボール!」「赤いね」「ころころ転がった」それだけです。
親が焦っていると、子どもにも伝わります。楽しそうに関わっている親の声やしぐさが、子どもの言葉への関心を育てていきます。心配する気持ちはちゃんと持ちながら、目の前の子どもと今日も一緒に笑う。それがきっと、一番のサポートになると私は思っています。
Photo by Tamara Govedarovic on Unsplash