NISAを始めようと証券口座を開いたはいいものの、いざファンドを選ぼうとすると数百本もの選択肢が並んでいて、どれにすればいいのか途方に暮れた——そういう経験をした人は少なくないはずです。
特にインデックスファンドは「低コストで長期投資に向いている」という評判は聞くものの、似たような名前の商品がいくつも並んでいて、違いがよくわからない。そんな状態で「とりあえずこれで」と選んでしまうのも少し怖い。
この記事では、NISAのつみたて投資枠・成長投資枠で選ばれやすいインデックスファンドの特徴と、選ぶときに見るべきポイントを具体的に整理します。読み終えたあとには「自分はこれを買えばいい」という感覚が持てるはずです。
そもそもインデックスファンドとは何か
インデックスファンドとは、日経平均株価やS&P500といった「指数(インデックス)」に連動することを目標にした投資信託です。
指数とは、ざっくり言えば「市場全体の動きをあらわす数値」のこと。たとえばS&P500はアメリカの代表的な企業500社の株価をまとめた指数で、この指数が上がればファンドの価値も上がり、下がれば下がります。
これに対してアクティブファンドは、ファンドマネージャーが「この銘柄が上がりそうだ」と判断して銘柄を選び、指数を上回るリターンを狙います。ところが長期的に見ると、アクティブファンドの多くはインデックスファンドに勝てないというデータが世界中で示されています。さらに手数料(信託報酬)も高い。
だから「長期・分散・低コスト」という資産形成の原則を守るなら、インデックスファンドは非常に理にかなった選択です。
NISAでインデックスファンドを選ぶときに見る3つのポイント
数ある商品の中から選ぶとき、以下の3点を基準にするとぐっと絞り込みやすくなります。
①信託報酬(年間コスト)
信託報酬とは、ファンドを保有しているあいだ毎年かかる管理費用のことです。たとえば信託報酬が年0.1%なら、100万円の保有で年間1,000円のコストがかかります。
これだけ聞くと大した金額ではないように思えますが、20〜30年という長期で見ると差は無視できません。0.1%と0.5%の差は、30年間で複利効果も加わって最終的な資産額に数十万円単位の差を生むことがあります。
NISAで選ぶインデックスファンドの目安は、信託報酬が年0.2%以下。できれば0.1%前後のものが理想的です。
②連動する指数(どの市場に投資するか)
インデックスファンドにはさまざまな種類があります。日本株に投資するもの、アメリカ株に投資するもの、全世界の株に投資するものなど。どの市場に投資するかによって、リターンの特性やリスクが変わります。
後ほど詳しく紹介しますが、初心者から中級者まで幅広く選ばれているのは「全世界株式」または「米国株式(S&P500)」に連動するファンドです。
③純資産総額(ファンドの規模)
純資産総額とは、そのファンドに集まっているお金の合計額です。これが大きいほど、ファンドとして安定して運営されやすい。逆に小さすぎると、突然「繰上償還(ファンドの早期終了)」になるリスクがあります。
目安として純資産総額が100億円以上あれば安心感があります。人気のファンドであれば数千億円〜1兆円を超えるものも多くあります。
NISAで多くの人が選ぶ代表的なインデックスファンド
ここからは具体的なファンドを紹介します。ただし特定のファンドへの投資を勧めるものではなく、あくまで参考として読んでください。実際の選択は自分のリスク許容度や目的に合わせて判断することが大切です。
全世界株式に連動するファンド(通称「オルカン」)
「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」は、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスという指数に連動するファンドです。日本を含む世界約50か国・3,000銘柄以上に分散投資できます。
信託報酬は年0.05775%(税込)と業界最低水準クラスで、純資産総額も4兆円を超えるなど規模も十分。NISAのつみたて投資枠の対象ファンドでもあります。
「1本でとにかく世界全体に分散したい」という人に向いています。アメリカが約60%を占めますが、新興国や欧州・日本なども含まれているため、特定の国に集中するリスクを避けられます。
「どれか1本だけ選んでください」と言われたら、多くのファイナンシャルプランナーがこのオルカンを候補として挙げるほど、汎用性の高いファンドです。
米国株式(S&P500)に連動するファンド
「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は、アメリカの代表企業500社で構成されるS&P500指数に連動するファンドです。アップル、マイクロソフト、アマゾン、エヌビディアといった世界を代表する企業が含まれています。
信託報酬は年0.09372%(税込)。純資産総額は6兆円を超えており、日本のインデックスファンドの中でも最大規模のひとつです。
過去の長期実績で見ると、S&P500は年率平均7〜10%程度のリターンを出してきました(ただし過去の実績は将来を保証するものではありません)。「アメリカ経済の成長に乗りたい」という人に選ばれやすいファンドです。
一方で、投資先がアメリカ一国に集中するため、アメリカ経済が長期的に低迷した場合のリスクはオルカンよりも高くなります。それでも「アメリカ株は長期的に強い」という考え方を持つ投資家に根強い人気があります。
日本株式に連動するファンド
日本株に投資するファンドとしては、TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価に連動するものがあります。「eMAXIS Slim 国内株式(TOPIX)」や「ニッセイ TOPIXインデックスファンド」などが代表例で、信託報酬も0.1%台と低水準です。
日本株ファンドの特徴は、為替リスクがないこと。海外株ファンドは円安・円高の影響を受けますが、日本株ファンドはそのリスクがありません。
ただし日本経済は人口減少・低成長という課題を抱えており、長期的な成長期待という点では海外株に比べて見劣りするという意見もあります。「日本経済も応援したい」「為替の影響を受けたくない」という人が、全世界株式や米国株式と組み合わせる形で保有するケースが多いです。
先進国株式に連動するファンド
「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」は、MSCIコクサイ・インデックスという指数に連動し、日本を除く先進国約1,300銘柄に投資します。アメリカが約70%を占め、欧州・カナダ・オーストラリアなども含まれます。
「全世界株式と何が違うの?」と思うかもしれませんが、先進国株式は新興国(中国・インドなど)を含まない点が主な違いです。新興国はリターンが高い可能性がある半面、政治リスクや規制リスクも大きい。「新興国は含めたくない」という人に選ばれます。
つみたて投資枠と成長投資枠、どう使い分けるか
NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類があります。インデックスファンドとの関係で整理しておきましょう。
つみたて投資枠(年間120万円まで)
つみたて投資枠で買えるファンドは、金融庁が定めた基準をクリアしたものに限られます。具体的には、信託報酬が一定水準以下であること、分配金を頻繁に出さないことなどの条件があります。
これはある意味「金融庁がフィルタリングしてくれている」状態。変な商品を買わされるリスクが低いため、初心者はまずつみたて投資枠から始めるのが安心です。先ほど紹介したeMAXIS Slimシリーズなど、主要なインデックスファンドはほぼこの枠で購入できます。
成長投資枠(年間240万円まで)
成長投資枠では、つみたて投資枠で買えるファンドに加えて、個別株やETF(上場投資信託)なども購入できます。インデックスファンドを成長投資枠で買うことも可能です。
「つみたて投資枠で買っているファンドと同じものを成長投資枠でも買う」という使い方もできます。年間の非課税投資枠を最大限活用したい人はこうした方法をとることもあります。
「結局どれを選べばいいの?」という人へ
ここまで読んでも「選択肢が多くてまだ迷う」という人のために、シンプルな考え方をお伝えします。
まず、「何も決められないまま始めない」よりも「とりあえず始める」ほうがずっと大事です。投資の世界では「時間」が最大の味方。完璧な選択を探し続けて1年間動かないよりも、標準的なファンドに1年間積み立てたほうがはるかに意味があります。
その上で、選び方の目安を示すとこうなります。
- 「とにかくシンプルに1本で完結させたい」→ 全世界株式(オルカン)
- 「アメリカ経済の成長を重視したい」→ 米国株式(S&P500)
- 「為替リスクを避けたい・日本経済も応援したい」→ 国内株式(TOPIX)をサブで組み合わせる
多くの場合、「オルカン1本」または「S&P500を中心に国内株を少し組み合わせる」のどちらかで十分です。難しく考えすぎず、まずは1本選んで始めてみてください。
よくある疑問に答えます
Q. 複数のファンドに分散したほうがいいですか?
インデックスファンド同士を複数持っても、中身が重複することが多いです。たとえばオルカンとS&P500を両方持つと、どちらにも米国株が大きく含まれているため、実質的には米国株比率が高いポートフォリオになります。
「分散のために複数買う」という感覚は少し違っていて、1本のオルカンですでに世界中に分散されています。最初は1本から始めて、慣れてきたら少しずつ考えを広げていくのが自然な流れです。
Q. 毎月いくらから始めればいいですか?
証券会社によっては月100円から積み立てられます。金額よりも「続けること」が大切なので、無理のない範囲から始めることをおすすめします。
一般的には月1万〜3万円程度から始める人が多いですが、家計の状況に合わせて決めましょう。毎月の生活費や緊急予備資金を確保した上で、余裕資金を積み立てに回すのが基本です。
Q. 相場が下がったときに売ったほうがいいですか?
長期のインデックス投資において、相場の下落は「安く買えるチャンス」でもあります。積み立て投資は下がったときにたくさん口数を買えるため、ドルコスト平均法の効果が働きます。
「下がったから怖くて売る」というのは、長期投資において最も避けたい行動のひとつ。相場の波に感情的に反応しないためにも、自動積み立て設定にしておくことが有効です。
始める前に確認しておきたいこと
インデックスファンドへの投資は元本保証ではありません。市場が大きく下落すれば資産が減ることもあります。ただし、長期・分散・積み立てという原則を守ることで、リスクを抑えながら資産を育てていける可能性が高まります。
大切なのは「5〜10年以上使わないお金で投資する」こと。すぐに必要になるかもしれないお金を投資に回すのはリスクが高い。まず生活費の3〜6か月分を手元に残し、それ以上の余裕資金で始めることが重要です。
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