「毎月いくら積み立てればいいの?」この悩みは誰もが通る道
NISAを始めようと思ったとき、最初にぶつかる壁が「金額をいくらにするか」という問題です。少なすぎても意味がなさそうだし、多すぎると生活が苦しくなる。ネットで調べると「まずは1万円から」「余裕があれば3万円」など、人によって言うことがバラバラで、結局どうすればいいのか迷ったまま時間だけが過ぎていく。
そういった状況で大切なのは、「正解の金額」を探すのではなく、「自分にとって無理のない金額」を見つけることです。この記事では、積立金額を決めるための考え方を順番に説明していきます。読み終わる頃には、自分なりの答えが出るはずです。
積立金額を決める前に:「収支の把握」が土台になる
金額を決めようとして、いきなり証券口座の設定画面を開いてしまう人がいますが、それは少し早い。まず自分の家計がどういう状態にあるかを確認することが先決です。
毎月いくら「余っているか」を知る
家計の状態を確認するには、「手取り収入」から「毎月の支出」を引いた金額を把握するのが一番シンプルです。
たとえば手取り月収が25万円で、家賃・光熱費・食費・通信費・交際費などをすべて合わせた支出が21万円なら、毎月4万円が余る計算です。この余剰部分が「投資に回せる原資」になります。
ただし、ここで注意したいのは「余ったお金を全部投資に回さない」ということ。突然の病気や冠婚葬祭、家電の買い替えなど、予期しない出費は必ず発生します。月の余剰が4万円あるとしたら、まずその一部を「生活防衛資金」として手元に残しておく感覚が大切です。
生活防衛資金はどれくらい必要か
生活防衛資金の目安としてよく言われるのが「生活費の3〜6ヶ月分」です。月の生活費が21万円なら、63万〜126万円ほどを普通預金や定期預金などすぐ引き出せる形で確保しておくのが理想です。
この金額がまだ貯まっていない場合は、NISAへの積立と並行しながら、あるいはある程度貯まってからNISAを始めるという順番も考えられます。投資は「余裕資金でやるもの」が鉄則で、生活費を削ってまで投資するのは本末転倒です。
積立金額の決め方:3つのアプローチ
家計の状態が把握できたら、次は実際に積立金額を決めていきます。ここでは代表的な3つの考え方を紹介します。自分の状況に合ったものを選んでください。
アプローチ①:「余剰資金の半分」からスタートする
最もシンプルで挫折しにくい方法が、毎月の余剰資金の半分程度を積立に回すやり方です。
先ほどの例で言えば、余剰が4万円なら2万円を積立に設定する。残りの2万円は自由に使ったり、貯金に回したり、生活防衛資金の上積みに使う。こうすることで、投資をしながらも「お金が全部消えた感覚」にならずに済みます。
投資を続けることに慣れてきたら、少しずつ増やせばいい。最初から満額を入れなくても、「続けること」の方がはるかに大切です。
アプローチ②:「目標から逆算」して金額を決める
「老後に2,000万円必要だと聞いた」「子供の教育費として500万円貯めたい」といった具体的な目標がある場合は、そこから逆算して月々の積立額を割り出す方法が向いています。
たとえば、30年後に2,000万円を用意したいとします。年利5%で運用できたと仮定した場合、必要な毎月の積立額はおよそ2万4,000円です。これを「無理なく出せるか」で判断します。出せるなら目標ベースで設定し、難しければ目標金額か期間を見直す。
ただし、将来の運用利回りは確約されていません。「5%で運用できればこうなる」という目安として使い、定期的に見直すことが必要です。
参考として、よく使われる想定利回りは3〜5%の範囲です。インデックスファンド(世界中の株式に分散投資する商品)の長期平均リターンを参考にしているもので、当然上下のブレはあります。「保守的に見積もりたい」なら3%、「長期ならそれなりに期待できる」と考えるなら5%で計算してみるといいでしょう。
アプローチ③:「NISA非課税枠から考える」
NISAには年間の非課税投資枠が設けられています。つみたて投資枠は年間120万円(月換算で10万円)、成長投資枠は年間240万円です。合わせて年間360万円、生涯で1,800万円まで非課税で運用できます。
この枠を「できる限り使い切りたい」という意識で金額を設定するアプローチもあります。ただ、これはあくまでも「上限」の話です。月10万円を積み立てなければいけないわけではなく、毎月1,000円でもNISAは使えます。
非課税枠を意識しすぎて無理な金額を設定し、生活が苦しくなって途中でやめてしまうのが一番もったいない結果です。枠は使い切れなくてもいい。自分のペースで積み立て続けることが大切です。
収入・ライフステージ別の目安金額
「とはいえ、他の人はどれくらい積み立てているんだろう」と気になる人も多いと思います。あくまで参考として、収入やライフステージ別の目安を紹介します。
手取り月収20万円前後(一人暮らし・社会人1〜3年目)
手取り20万円で一人暮らしをしていると、家賃や生活費を払うと残りはそれほど多くありません。この段階では月5,000円〜1万円でも十分スタートとして意味があります。
「少額でも意味があるの?」と思うかもしれませんが、月1万円を30年間・年利5%で積み立てた場合、元本360万円が約830万円になります。少額でも長期間続けることで複利の力が働くため、早く始めるほど有利です。
手取り月収25〜30万円(20代後半〜30代・共働き・独身)
ある程度生活が安定してきたこの時期は、月1〜3万円が現実的な範囲です。生活防衛資金がある程度貯まっているなら、上限に近い金額を設定してもいいでしょう。
この時期に積立を習慣化できると、その後のライフスタイルの変化(結婚・出産など)にも対応しやすくなります。
手取り月収30万円以上(30〜40代・子育て世代)
子育て世代はなにかと出費が重なる時期です。教育費の積み立てと老後資金の積み立てを同時に進めなければならないケースも多く、家計の優先順位をしっかり決めることが必要です。
NISAを教育費用の資金形成に使う場合は、使うまでの期間が短い(10〜15年以内)ことを念頭に置き、リスクのとり方を調整する必要もあります。老後資金は30年以上の長期になるため、比較的リスクをとった運用も検討できます。
金額を決めたら「自動化」が9割の成功を決める
積立金額が決まったら、次に大切なのは「自動的に引き落とされる仕組みにすること」です。毎月「さあ今月も投資しよう」と手動で操作している人は、続かなくなるリスクが高い。
NISA口座での積立投資は、証券会社の設定画面で「毎月○日に○円引き落とし」という形で自動化できます。一度設定してしまえば、あとは何もしなくてもお金が投資に回り続けます。
「先取り貯蓄」という考え方があります。給料が入ったら、使う前に自動的に積立に回してしまう。残ったお金で生活する習慣をつけることで、「気づいたら使ってしまっていた」という状況を防げます。
自動化のポイントは、給与振込日の翌日か翌々日に引き落とし日を設定することです。お金があると「もう少し使えるかな」と感じてしまうのは人間の性質ですが、入金直後に自動で出ていく設定にすることで、そもそも使える余地がなくなります。
積立金額は「固定」しなくていい
「一度決めたら変えてはいけない」と思っている人がいますが、そんなことはありません。NISAの積立金額は途中で変更できます。
ボーナスが入った月だけ増額する「スポット購入」も活用できますし、生活環境が変わって余裕が出てきたときに増額するのも自然な流れです。逆に、収入が下がったり支出が増えたりしたときは、躊躇なく減額してください。
大切なのは「ゼロにしないこと」です。毎月500円でも続けている状態は、完全にやめてしまうよりずっと良い。積立をやめると、それを再開するのに思った以上のエネルギーが要ります。少額でもいいので継続する習慣を手放さないことが、長期投資の最大のコツです。
金額よりも大切なこと:「続けられるか」で判断する
積立金額を考えるとき、ついつい「いくらにすれば一番効率がいいか」を考えてしまいがちです。でも実際のところ、効率よりも「続けられるかどうか」の方がはるかに重要です。
月5万円積み立てて3年でやめてしまうより、月1万円を20年続けた方が最終的な資産は大きくなります。複利の効果は時間が長いほど強力に働くからです。
積立金額を決めるときに自分に問いかけてほしいのは、「この金額で、来月も再来月も、5年後も同じように積み立て続けられるか?」という問いです。「うーん、ちょっとキツいかも」と思ったなら、それは減額のサインです。
生活が苦しくなるような金額を設定して、毎月モヤモヤしながら投資するのは精神的にも良くありません。気持ちよく、「これくらいなら余裕だな」と思える金額が、あなたにとっての正しい積立金額です。
まず一歩:最初の金額を決めるための3つの質問
ここまで読んで「それでもまだ迷う」という人のために、今すぐ答えられる3つの質問を用意しました。この答えを出すだけで、最初の積立金額が決まります。
質問1:毎月の手取り収入から支出を引くといくら残りますか?
だいたいで構いません。「2〜3万円くらい」「5万円くらい」という感覚で答えてみてください。
質問2:生活防衛資金(生活費3ヶ月分)はありますか?
ある → 積立に集中できます。余剰資金の半分程度を積立に設定してみましょう。
ない → 積立と並行しながら貯蓄も続ける。積立は月5,000〜1万円程度に抑えて、残りを貯蓄に回します。
質問3:「これが毎月なくなっても生活に支障はない」と思える金額はいくらですか?
この金額が、あなたの積立金額の上限です。その8割程度からスタートするのがちょうどいい塩梅です。
たとえば「2万円なら余裕」と思ったなら、最初は1万5,000〜2万円程度に設定する。ギリギリではなく、少し余裕をもたせた金額でスタートするのがポイントです。
積立金額を決めたあとにすること
金額が決まったら、次は証券口座を開いて積立設定をするだけです。迷いすぎて決断が遅くなるより、「とりあえずこの金額でやってみよう」と動き出す方が、圧倒的に大切です。
1年後に家計を見直して、増やせそうなら増やす。減らしたいなら減らす。それで十分です。完璧な金額なんてありません。「今の自分が無理なく続けられる金額」が、今のあなたにとって正解の金額です。
積立投資はマラソンと同じで、最初のペースを速くしすぎると後半でバテます。自分のペースで長く走り続けることが、最終的に一番遠くまで行ける方法です。焦らず、でも着実に、一歩踏み出してみてください。
Photo by Jakub Żerdzicki on Unsplash