カフェのメニューを見ていて、「シングルオリジン」「ウォッシュド」「カッピング」……なんとなく聞いたことはあるけれど、正直よくわからないまま注文している、という方は多いのではないでしょうか。

コーヒーの世界には、独特の専門用語がたくさんあります。それが「コーヒーって難しそう」という印象を生んでしまうことも。でも実は、ひとつひとつの言葉の意味を知ると、コーヒーの選び方がぐっと楽しくなります。メニューを見るのが楽しくなるし、豆を選ぶときにも迷いが減ります。

この記事では、コーヒーを楽しむうえで知っておくと役立つ基本用語を、できるだけわかりやすく丁寧にお伝えします。難しく考えずに、コーヒーの世界への入り口として読んでいただければ嬉しいです。

産地・豆に関する用語

シングルオリジン

「シングルオリジン」とは、特定の産地や農園から収穫されたコーヒー豆のことを指します。ひとつの産地の個性をそのまま楽しめるのが特徴で、「エチオピア産」「グアテマラ産」のようにラベルに書かれていることが多いです。

産地ごとに気候や土壌が異なるため、味わいもまったく違います。エチオピアは花のような香りと果実感、ブラジルはナッツやチョコレートのようなまろやかさ、というように、産地の個性がそのまま風味に出るのがシングルオリジンの面白さです。

ブレンド

複数の産地や農園の豆を混ぜ合わせたものが「ブレンド」です。シングルオリジンが「個性を楽しむ」ものだとすれば、ブレンドは「バランスを楽しむ」ものとも言えます。バリスタや焙煎士が意図的に複数の豆を組み合わせることで、単独の豆では出せない複雑な風味や、安定した味わいを作り出します。

カフェの「ハウスブレンド」はそのお店の看板コーヒーとも言えるもの。そのお店らしさが詰まっています。

テロワール

もともとはワインの世界で使われていた言葉ですが、コーヒーでも使われるようになりました。その土地の土壌・気候・標高・水質など、自然環境がコーヒーの風味に与える影響を表す概念です。

同じ品種の豆でも、育った場所が違えば風味がまったく変わることがあります。「この豆の個性はどこから来ているの?」と思ったとき、テロワールという視点で考えると、コーヒーへの理解が一段と深まります。

スペシャルティコーヒー

コーヒーの品質を評価する国際的な基準があり、その審査で一定以上のスコアを獲得したものを「スペシャルティコーヒー」と呼びます。生産地から消費者の手元に届くまでのすべての工程において、品質管理が徹底されていることが条件です。

最近はカフェや専門店でよく目にするようになりましたが、単に「高級」という意味ではなく、トレーサビリティ(産地の追跡可能性)や品質の透明性が担保されていることが重要です。

精製(プロセス)に関する用語

コーヒーの実からコーヒー豆を取り出す工程を「精製」と言います。この方法の違いが、コーヒーの風味に大きな影響を与えます。精製方法を知ると、同じ産地の豆でもなぜ味が違うのかがわかるようになります。

ウォッシュド(水洗式)

コーヒーチェリー(コーヒーの実)の果肉を機械で取り除き、水で洗いながら豆を乾燥させる方法です。クリーンでクリアな味わいが特徴で、豆本来の個性がよく出やすい精製方法です。エチオピアやケニアの豆でよく使われています。

「クリーンカップ」という表現をよく見かけますが、これはウォッシュドのコーヒーに多い表現で、雑味がなくすっきりとした透明感のある味わいを指します。

ナチュラル(乾燥式)

コーヒーチェリーをそのまま天日干しして乾燥させ、乾いてから果肉を取り除く方法です。乾燥の過程で果肉の糖分や風味が豆に染み込むため、フルーティーで甘みのある複雑な風味になりやすいです。エチオピアやブラジルの豆でよく採用されています。

ナチュラルのコーヒーを飲んだとき「フルーツっぽい」「ベリーのような香り」と感じたことがあれば、それはまさにこの精製方法の影響です。

ハニープロセス

ウォッシュドとナチュラルの中間のような精製方法です。果肉を取り除いた後、ぬめり成分(ミューシレージ)を残したまま乾燥させます。残すミューシレージの量によって「イエローハニー」「レッドハニー」「ブラックハニー」と呼び方が変わり、残す量が多いほど甘みと複雑さが増します。

中米のコスタリカやエルサルバドルでよく見られる方法で、甘みとクリーンさのバランスが取れた風味が楽しめます。

焙煎に関する用語

焙煎(ロースト)

生の状態のコーヒー豆(グリーンビーンズ)を熱で炒る工程のことです。焙煎によって生豆に含まれる成分が化学変化を起こし、私たちがよく知るコーヒーの香りや色、風味が生まれます。焙煎なしには、コーヒーの味は存在しないと言っても過言ではありません。

浅煎り・中煎り・深煎り

焙煎の度合いを表す言葉です。浅煎りは豆の個性や酸味を生かした明るい風味、深煎りは苦みとコクが増した濃厚な風味、中煎りはその中間のバランスが取れた風味になります。

英語では「ライトロースト」「ミディアムロースト」「ダークロースト」などと表現されます。浅煎りが苦手な方でも、中煎りから試してみるとコーヒーの幅が広がりやすいですよ。

ファーストクラック・セカンドクラック

焙煎中に豆が「パチパチ」と音を立てる瞬間があります。最初の音がファーストクラック(一ハゼ)、2回目の音がセカンドクラック(二ハゼ)です。どのタイミングで焙煎を止めるかによって、仕上がりの焙煎度合いが決まります。

焙煎士はこの音や豆の色、香りを頼りに、最適なタイミングを判断しています。シンプルに聞こえますが、これが職人技と呼ばれるゆえんです。

抽出に関する用語

ドリップ

フィルターに挽いたコーヒー豆をセットし、お湯をゆっくりと注いで抽出する方法です。「ハンドドリップ」は手で湯を注ぐスタイルで、注ぐ速さや量・タイミングによって味が変わるため、奥が深い抽出方法です。

家でコーヒーを楽しむ入り口としても人気で、ドリッパーとフィルター、ケトルがあれば始められます。

蒸らし

ドリップの最初に行う工程で、少量のお湯を全体に注いで20〜30秒ほど待つことです。豆の中の炭酸ガスを逃がし、お湯が豆全体に均一にいきわたるようにするための大切なひと手間です。

蒸らしをしっかりすることで、コーヒーの成分がスムーズに溶け出し、風味豊かな一杯に近づきます。ここを省いてしまうと、味にムラが出やすくなります。

エスプレッソ

専用のエスプレッソマシンを使い、高圧のお湯を短時間で細かく挽いた豆に通して抽出する方法です。少量ですが、濃厚でコクのある味わいが特徴です。カプチーノやラテのベースになります。

ドリップとはまったく異なる抽出原理で、使う豆の挽き目や量、圧力など多くの要素が絡み合います。カフェで飲むエスプレッソの一杯には、バリスタの細かな調整が詰まっています。

透過式と浸漬式

コーヒーの抽出方法を大きく分けると、この2種類になります。「透過式」は、お湯を豆の層に通して成分を抽出する方法で、ドリップがこれにあたります。「浸漬式」は、豆をお湯に浸して成分を溶け出させる方法で、フレンチプレスやコールドブリューがこれです。

透過式は操作によって味をコントロールしやすく、浸漬式は比較的安定した味になりやすいという特徴があります。どちらが優れているということではなく、それぞれの良さがあります。

味わい・評価に関する用語

フレーバー

コーヒーを飲んだときに感じる風味全体のことです。酸味・甘み・苦み・香りなど、口の中と鼻で感じるすべての要素が含まれます。「フルーティーなフレーバー」「チョコレートのようなフレーバー」のように使われます。

コーヒーのパッケージに「ブルーベリー」「カシス」「ジャスミン」などと書かれているのを見たことがあるでしょうか。あれはフレーバーを表現したもので、添加物が入っているわけではありません。豆が持つ自然な風味の描写です。

アシディティ(酸味)

コーヒーにおける「酸味」は、酸っぱさのことではなく、爽やかな明るさや活気のある風味を指します。品質の高いコーヒーの酸味は、むしろ好意的に評価される要素のひとつです。

「酸味が苦手」という方の多くは、劣化によるネガティブな酸味を経験しているケースが多いです。新鮮な豆を適切に抽出した浅煎りコーヒーの酸味は、フルーツのような爽やかさで、飲みやすく感じる方も多いですよ。

ボディ

コーヒーの「重さ」や「口当たりの厚み」を表す言葉です。ボディが重い(フルボディ)コーヒーは、口の中でどっしりとした存在感があり、ボディが軽い(ライトボディ)コーヒーは、水のようにすっと飲めるイメージです。

深煎りや濃い抽出はボディが重くなりやすく、浅煎りや薄めの抽出は軽くなりやすい傾向があります。好みに合わせて選ぶ際のヒントにしてみてください。

アフターテイスト(余韻)

コーヒーを飲み込んだ後に口の中に残る風味のことです。良質なコーヒーほど、飲んだ後も心地よい香りや甘みが続きます。「飲み終わった後にチョコレートのような甘みが残る」という表現を聞いたことがあれば、まさにアフターテイストの話です。

カッピング

コーヒーの品質を評価するために行う、専門的なテイスティングの手法です。粉に直接お湯を注ぎ、一定時間置いた後にスプーンで吸い込んで風味を評価します。世界共通のルールがあり、スペシャルティコーヒーの評価にも使われます。

コーヒーのプロが複数の豆を比較・評価する場面で行われますが、家でも気軽に応用できます。複数の豆を並べて飲み比べるだけでも、違いがよくわかって楽しいですよ。

器具・道具に関する用語

グラインダー(ミル)

コーヒー豆を挽く道具です。手動のものを「ハンドミル」、電動のものを「電動グラインダー」と呼びます。豆を挽いてから時間が経つほど酸化が進むため、飲む直前に挽くことで風味が格段に良くなります。

「コーヒーを美味しくするために、まず何か一つ買うなら?」と聞かれたら、迷わずグラインダーをお勧めします。それほど味への影響が大きい道具です。

挽き目(グラインドサイズ)

豆を挽いたときの粒の粗さのことです。粗挽き・中挽き・細挽き・極細挽きなどがあります。抽出方法によって適切な挽き目が異なり、フレンチプレスは粗挽き、ドリップは中挽き、エスプレッソは極細挽きが基本です。

挽き目が細かいほど成分が溶け出しやすくなり、濃くなりやすいです。逆に粗いと薄くなりやすい。毎回味が違うと感じている方は、挽き目が安定していないことが原因のひとつかもしれません。

ドリッパー

ハンドドリップに使うコーヒーをセットするための器具です。形状や穴の数によって抽出のスピードや味わいが変わります。代表的なものには、ハリオV60(円錐形)、カリタ(台形・3つ穴)、メリタ(台形・1つ穴)などがあります。

最初の一台を選ぶなら、抽出が安定しやすいカリタやメリタが使いやすいですよ。慣れてきたらV60でコントロールを楽しむのもおすすめです。

TDS(総溶解固形物)

コーヒーに溶け込んでいる成分の濃度を示す数値で、専門的な場面で使われます。TDSが高いほど濃く、低いほど薄いコーヒーということになります。プロのバリスタはTDSを測定しながら抽出の精度を高めることがありますが、一般的には「濃さ」のイメージで覚えておくだけで十分です。

用語を知ると、コーヒーが変わる

コーヒーの用語は、決して難しいものではありません。知れば知るほど、豆の選び方や淹れ方が楽しくなっていきます。カフェのメニューを眺めながら「これはナチュラルプロセスだから、甘みが強いかな」と想像できるようになると、注文するだけでもワクワクしてきます。

最初から全部覚えなくても大丈夫です。気になった言葉から少しずつ覚えていくだけで、コーヒーの世界はどんどん広がっていきます。次にカフェへ行くとき、あるいは豆を選ぶとき、ここで紹介した言葉をひとつ思い出してみてください。きっと、いつもと少し違うコーヒーの楽しみ方が見えてくるはずです。

Photo by Siborey Sean on Unsplash