「コーヒー=カフェインが多い」は本当?
「夜にコーヒーを飲むと眠れなくなるから控えている」「カフェインが気になるから、1日1杯までにしている」——そんな方も多いのではないでしょうか。
たしかにコーヒーにはカフェインが含まれていますが、実はその量は一定ではありません。同じ「コーヒー1杯」でも、豆の種類や焙煎度、淹れ方によって、カフェインの量は大きく変わってくるのです。
つまり、カフェインとの付き合い方を考えるうえで大切なのは、「コーヒーを飲むか飲まないか」という二択ではなく、「どんなコーヒーを、どう飲むか」という視点かもしれません。
この記事では、コーヒーのカフェイン量を左右するさまざまな要素について、バリスタとしての経験をもとに丁寧に解説していきます。カフェインについて正しく知ることで、ご自身のライフスタイルに合ったコーヒーの楽しみ方が見つかるはずです。
そもそもカフェインとは何か
カフェインについて理解を深める前に、まずはその正体を知っておくことが大切です。
カフェインは、コーヒー豆やお茶の葉、カカオなどに自然に含まれる天然成分で、化学的には「アルカロイド」と呼ばれる物質の一種です。植物が害虫から身を守るために生成しているとも言われています。
私たちがカフェインを摂取すると、脳内の「アデノシン」という眠気を促す物質の働きをブロックするため、覚醒感や集中力の向上を感じることがあります。朝のコーヒーで目が覚める感覚は、このメカニズムによるものです。
一般的に、健康な成人であれば1日400mg程度までのカフェイン摂取は問題ないとされています(※参考:欧州食品安全機関 EFSA)。ただし、カフェインへの感受性は個人差が大きく、少量でも影響を受けやすい方もいれば、あまり感じない方もいます。
大切なのは、自分の体質や生活リズムに合わせて、カフェインの量を調整することではないでしょうか。そのためにも、コーヒーのカフェイン量がどのような要素で変化するのかを知っておくことには意味があります。
コーヒー豆の品種による違い
カフェイン量を左右する最も基本的な要素のひとつが、コーヒー豆の「品種」です。
コーヒー豆は大きく分けて「アラビカ種」と「ロブスタ種(カネフォラ種)」の2つに分類されます。スペシャルティコーヒーとして流通しているものの多くはアラビカ種で、繊細な香りや複雑な風味が特徴です。一方、ロブスタ種は苦味が強く、インスタントコーヒーや缶コーヒーの原料として使われることが多い品種です。
ここで注目したいのが、両者のカフェイン含有量の違いです。
| 品種 | カフェイン含有量(生豆100gあたり) | 主な特徴 |
|---|---|---|
| アラビカ種 | 約1.0〜1.5g | 繊細な香り、酸味と甘みのバランス |
| ロブスタ種 | 約2.0〜2.5g | 強い苦味、力強いボディ感 |
このように、ロブスタ種はアラビカ種の約2倍ものカフェインを含んでいます。つまり、同じ量のコーヒーを飲んでも、ロブスタ種をベースにしたものはカフェイン摂取量が多くなるということです。
カフェを訪れたときや豆を購入するときに、品種を確認してみるのもひとつの方法です。スペシャルティコーヒーショップで扱っている豆はほとんどがアラビカ種ですので、カフェイン量を抑えたい方にとっては安心材料になるかもしれません。
焙煎度はカフェイン量に影響するのか
「深煎りはカフェインが少ない」は本当?
「深煎りのコーヒーはカフェインが少ない」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは半分正しく、半分は誤解を含んでいます。
まず、科学的な事実として、焙煎によってカフェインが大きく分解されることはありません。カフェインは非常に安定した物質で、焙煎時の高温にも耐える性質を持っています。
では、なぜ「深煎りはカフェインが少ない」と言われるのでしょうか。その理由は「測り方」にあります。
重量で測るか、体積で測るか
コーヒー豆は焙煎が進むにつれて、水分が抜けて軽くなり、同時に膨張して体積が大きくなります。つまり、深煎りの豆は浅煎りの豆に比べて、同じ重さでも粒の数が多く、同じ体積でも重さが軽いのです。
ここで考えてみてください。コーヒーを淹れるとき、豆を「何グラム」で測る方と「スプーン何杯」で測る方がいらっしゃいます。
重量(グラム)で測った場合、深煎りでも浅煎りでも豆の量は同じですから、抽出されるカフェイン量にほとんど差はありません。しかし、体積(スプーン)で測った場合、深煎りの豆は軽いため、同じスプーン1杯でも実際の豆の量は少なくなります。結果として、深煎りのコーヒーのほうがカフェイン量が少なくなるのです。
このように、焙煎度そのものがカフェイン量を減らすわけではなく、計量方法によって結果が変わるというのが正確な理解です。カフェインを気にされる方は、豆の重さをスケールで測る習慣をつけると、より正確にカフェイン摂取量をコントロールできるようになります。
抽出方法による違い
同じコーヒー豆を使っても、どのように淹れるかによってカフェインの抽出量は変わってきます。ここでは代表的な抽出方法ごとの特徴を見ていきましょう。
ドリップコーヒー
ペーパーフィルターを使ったハンドドリップは、日本で最も親しまれている抽出方法のひとつです。お湯を注ぐ時間や速度を調整しやすく、比較的カフェインの抽出量もコントロールしやすいという特徴があります。
一般的な目安として、ドリップコーヒー1杯(約150ml)あたりのカフェイン量は80〜100mg程度とされています。ただし、豆の量や抽出時間によって前後するため、あくまで参考値として捉えてください。
エスプレッソ
エスプレッソは高い圧力をかけて短時間で抽出する方法です。「濃いからカフェインも多いはず」と思われがちですが、実は1杯あたりのカフェイン量は意外と控えめです。
エスプレッソ1ショット(約30ml)に含まれるカフェインは60〜80mg程度。これはドリップコーヒー1杯より少ない量です。ただし、ラテやカプチーノなどでダブルショットを使う場合は、当然カフェイン量も2倍になりますので、注文時に確認してみるとよいでしょう。
フレンチプレス
金属製のフィルターを使うフレンチプレスは、コーヒーの油分や微粉も一緒に抽出されるため、風味がリッチになる方法です。一方で、ペーパーフィルターに比べてカフェインの抽出効率も高くなる傾向があります。
一般的にフレンチプレスで淹れた1杯(約150ml)には100〜120mg程度のカフェインが含まれるとされています。コクのある味わいが好みの方に人気の方法ですが、カフェインを控えたい方は量を調整するか、他の抽出方法を検討してみてもよいかもしれません。
水出しコーヒー(コールドブリュー)
水出しコーヒーは、低温の水で長時間かけてゆっくり抽出する方法です。熱を加えないためカフェインの抽出が抑えられそうに思えますが、実際には抽出時間が8〜12時間と非常に長いため、結果としてカフェイン量は多くなることがあります。
特に濃縮タイプのコールドブリューは、そのまま飲むとカフェイン量がかなり高くなります。水や牛乳で希釈して飲むことを想定した製品も多いため、購入時には飲み方の説明を確認することをおすすめします。
抽出方法別カフェイン量の目安
| 抽出方法 | 1杯あたりの量 | カフェイン量の目安 |
|---|---|---|
| ドリップコーヒー | 約150ml | 80〜100mg |
| エスプレッソ | 約30ml(1ショット) | 60〜80mg |
| フレンチプレス | 約150ml | 100〜120mg |
| 水出しコーヒー | 約150ml | 100〜150mg |
※カフェイン量は豆の種類、使用量、抽出条件によって変動します。上記はあくまで一般的な目安としてご参照ください。
豆の使用量と抽出時間の影響
豆の量を増やせばカフェインも増える
当然のことではありますが、使用するコーヒー豆の量が多ければ、抽出されるカフェインの量も増えます。「今日は濃いめに飲みたい」と豆を多めに使えば、その分カフェインも多く摂取することになります。
一般的なドリップコーヒーでは、1杯あたり10〜12g程度の豆を使うことが多いですが、お店によっては15g以上使うこともあります。コンビニコーヒーやチェーン店のコーヒーも、サイズによって豆の使用量が異なるため、大きなサイズを選ぶほどカフェイン摂取量は増えることを覚えておくとよいでしょう。
抽出時間が長いほどカフェインは多くなる
コーヒー豆とお湯(または水)が接触している時間が長ければ長いほど、カフェインはより多く溶け出します。これは他の成分についても同様で、抽出時間が長すぎると雑味や渋みも出やすくなります。
ハンドドリップでゆっくり時間をかけて抽出する方法は、風味をコントロールしやすい反面、カフェイン抽出量も多くなりがちです。逆に、短時間でさっと抽出するエスプレッソは、カフェインの総量は比較的抑えられます。
もしカフェインを控えめにしたい場合は、抽出時間を短めに設定したり、お湯の温度をやや低めにしたりすることで、ある程度調整することが可能です。ただし、味わいにも影響が出るため、バランスを見ながら調整してみてください。
挽き目(粒度)の違いも見逃せない
コーヒー豆をどのくらい細かく挽くかによっても、カフェインの抽出量は変わります。
豆を細かく挽くと、表面積が大きくなり、お湯との接触面が増えます。その結果、同じ抽出時間でもカフェインがより効率的に溶け出すのです。エスプレッソ用の極細挽きが短時間で濃厚な味わいを生み出せるのは、この原理によるものです。
一方、粗挽きの豆は表面積が小さいため、抽出効率は下がります。フレンチプレスで粗挽きの豆を使い、比較的短時間で抽出すれば、カフェインを抑えめにすることも可能です。
ただし、挽き目を変えると味のバランスも大きく変わります。カフェインを減らしたいからといって極端に粗く挽くと、薄くて物足りない味になってしまうこともあります。挽き目の調整は、カフェイン量と味わいの両方を考慮しながら、少しずつ試してみることをおすすめします。
デカフェという選択肢
カフェインを大幅に減らしたい場合、デカフェ(カフェインレスコーヒー)を選ぶという方法もあります。
デカフェとは、コーヒー豆からカフェインを取り除く処理を施したもので、一般的にカフェイン含有量は通常の豆の97%以上がカットされています。つまり、通常のコーヒーが100mgのカフェインを含むとすれば、デカフェは3mg以下になるということです。
かつてはデカフェというと「味が落ちる」というイメージがありましたが、近年は技術の進歩により、風味を損なわない高品質なデカフェ豆も増えてきました。特に「スイスウォータープロセス」や「二酸化炭素抽出法」といった方法で処理された豆は、化学溶剤を使わず、風味への影響も少ないとされています。
妊娠中や授乳中の方、カフェインに敏感な方、夜遅くにコーヒーを楽しみたい方にとって、デカフェは心強い選択肢となるでしょう。最近ではカフェやコーヒーショップでもデカフェメニューを用意しているところが増えていますので、気軽に試してみてはいかがでしょうか。
他の飲み物とのカフェイン量比較
コーヒーのカフェイン量をより実感していただくために、他の飲み物との比較もご紹介します。
| 飲み物 | 1杯あたりの量 | カフェイン量の目安 |
|---|---|---|
| ドリップコーヒー | 150ml | 80〜100mg |
| 紅茶 | 150ml | 30〜50mg |
| 緑茶 | 150ml | 20〜30mg |
| コーラ | 350ml | 30〜45mg |
| エナジードリンク | 250ml | 80〜150mg |
こうして比較すると、コーヒーのカフェイン量は確かに多めですが、エナジードリンクと同程度か、製品によってはそれ以下であることがわかります。また、紅茶や緑茶にもカフェインは含まれていますので、「コーヒーだけがカフェイン源」というわけではありません。
1日のカフェイン摂取量を管理したい場合は、コーヒーだけでなく、他の飲み物からの摂取量も含めてトータルで考えることが大切です。
自分に合ったカフェインとの付き合い方
ここまで、コーヒーのカフェイン量を左右するさまざまな要素をご紹介してきました。では、これらの知識をどのように活かせばよいのでしょうか。
たとえば、「朝はしっかり目覚めたいから、フレンチプレスで濃いめに淹れる」「午後からはカフェインを控えたいので、エスプレッソベースのラテを1杯だけにする」「夜のリラックスタイムにはデカフェを楽しむ」といった具合に、時間帯や目的に応じて飲み分けるのもひとつの方法です。
また、カフェインへの感受性は個人差が大きいため、ご自身の体調や睡眠への影響を観察しながら、最適な量を見つけていくことも大切です。コーヒーを飲んだ後に心拍数が上がったり、夜眠りにくくなったりする場合は、量を減らしたり、飲む時間帯を早めたりすることを検討してみてください。
コーヒーは嗜好品ですから、我慢して飲むものではありません。カフェインについて正しく理解し、自分なりのルールを作ることで、より気持ちよくコーヒーライフを楽しめるようになるはずです。
まとめ
コーヒーに含まれるカフェインの量は、「コーヒー1杯」という単位だけでは語れないほど、さまざまな要素によって変動します。
まず、豆の品種による違いとして、ロブスタ種はアラビカ種の約2倍のカフェインを含んでいます。焙煎度については、焙煎そのものがカフェインを減らすわけではなく、計量方法(重量か体積か)によって結果が変わるという点を押さえておくとよいでしょう。
抽出方法も大きな影響を与えます。ドリップ、エスプレッソ、フレンチプレス、水出しと、それぞれ特徴があり、カフェインの抽出量も異なります。さらに、豆の使用量、抽出時間、挽き目といった細かな条件も、最終的なカフェイン量を左右する要素です。
カフェインを大幅にカットしたい方には、デカフェという選択肢もあります。近年は品質の高いデカフェ豆も増えており、味わいを損なうことなくコーヒーを楽しめるようになっています。
大切なのは、これらの知識をもとに、ご自
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